2011 Fiscal Year Annual Research Report
高強度フェムト秒レーザーを用いた溶液内反応による新奇炭素クラスターの生成
Project/Area Number |
22550020
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
兒玉 健 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (20285092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤野 竜也 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (20360638)
城丸 春夫 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (70196632)
阿知波 洋次 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (20002173)
若林 知成 近畿大学, 理工学部, 准教授 (30273428)
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Keywords | フェムト秒レーザー / 炭素クラスター / フラーレン |
Research Abstract |
本研究においては、フェムト秒レーザーを用いた溶液内反応により、新奇炭素クラスターを生成・単離することを目的としている。H22年度の研究の結果、C_<70>のトルエン溶液にフェムト秒レーザーを照射した場合、C_<68>、C_<66>、C_<64>などのC_<70>からのC_2解離によって生成したと思われる炭素クラスタ-を成分とする黒色粉末が得られるのに対し、C_<70>の四塩化炭素溶液にフェムト秒レーザーを照射した場合には、黒色粉末は生成せずに透明な溶液が得られた。これはC_<68>等が塩素付加により安定化されたためではないかと推定した。本年度は、後者で生成する塩素で保護された解離生成物と考えられるものの同定を主たる目的として研究を行った。具体的には、以下のような結果が得られた。 1.四塩化炭素を溶媒に用いた場合、トルエンを溶媒とした場合とは異なり、黒色沈殿が生じず、透明な液体が得られるというH22年度に得られた実験結果が再現された。 2.紫外可視吸収スペクトルの測定では、単位物質量に対する照射エネルギーが増えるに従い(照射時間を長くするに従い)、330nm近傍の特徴的な吸収ピークの強度が増大することが分かった。このピークは、H22年度の照射実験の結果では弱くしか見えていなかった。これは、照射エネルギー量が今年度の場合に比べて少なかったためと考えられる。 3.ESI-MSの測定では、質量数約830を持つピークが得られた。しかし、現在のところ、質量パターンからの組成の確定はできていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、塩素で保護された解離生成物の同定を行うことを目的としていた。スペクトル情報など新たな特徴をとらえることはできたが、完全に同定するところまで到達することができなかったので「やや遅れている」という評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の結果、また、達成できなかった点をふまえ、本年度は次のことを行いたい。 (1)C_<70>からのC_2解離生成物を塩素で保護した場合に生成したものの同定。 (2)C_<70>溶液にフェムト秒レーザーを照射した時にサイズの小さな炭素クラスター(ポリインなど)が生成しているのかどうかを調べる。 (3)C_<76>とC_<78>には五員環同士が隣り合わない構造を持った安定な構造が存在する。C_<78>からのC_2解離によって生成するC_<76>が安定な構造をとるかどうかを調べる。C_<78>には主たる構造異性体が3種類存在する。出発C_<78>の構造が異なることによって、C_2解離の結果得られるC_<76>の構造がどうなるかについても調べる。 (4)金属内包フラーレンのハロゲン化体の生成を試みる。
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