2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22550023
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
築山 光一 東京理科大学, 理学部・第一部, 教授 (20188519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 光典 東京理科大学, 理学部・第一部, 助教 (90453604)
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Keywords | ASE / 自然放射増幅光 / レーザー / イオン対状態 / I2 |
Research Abstract |
自然放射増幅光(ASE : Amplified Spontaneous Emission)は,反転分布を持つ媒質中において,励起状態からの自然放射光が媒質自身の誘導放射過程によって増幅された光である。ASEは状態占有数の移動を伴う光学過程であり,これは放射緩和過程として取り扱うことができる。ASEは誘導放射による増幅作用によって起こるため,利得が得られるためにはいくつかの条件が満足されなければならず,発振はある特定の条件下でのみ起こる。そのため,気相分子系におけるASEの観測例は限られている。気相においてはNO,CO,ND3などの分子からのASE発振が確認されてきた。I2においてはイオン対状態からのASEが報告されている。しかし,これはレーザー光の重なりによる反転分布の長さと紫外蛍光強度の相関をASE発振の根拠としており,直接ASEを検出したわけではない。本年度は,I2のイオン対状態からのASEを直接検出した。具体的には,I2に対し光-光二重共鳴法を用い,イオン対状態(f状態)(v=0-6)からのレーザー誘起自然放射増幅光(LIASE)を直接観測した。このとき,中間状態にはValence状態(B状態)(v=21)を用いた。発光は波長約1660nmの近赤外光であることから,f状態からD状態への電子遷移であると帰属された。その発光の分散スペクトルには同一の振動量子数をもつ振動準位間の発光のみが観測された。Franck-Condon因子(FCFs)の計算から,f状態とD状態間のFCFsが同一の振動準位間のみで大きな値(~1)を持つ事に起因することが確かめられた。また,観測された発光が指向性を持つことと,その発振に閾値が存在することが実験的に確かめられた。さらに,LIFと比較して異なる偏光特性を持っていることが測定された。I2においてASEが直接検出されたのは本研究が初めてである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最難関であると思われた一酸化窒素からの遠赤外放射光の検出がすでに達成された。また一酸化窒素以外の気相分子であるI2について近赤外領域ながら自然放射増幅光を検出できた。これらは当初の計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
1.NOについては100ミクロンより長い領域における発光の検出をおこなう。I2について遠赤外領域における放射光を検出し、その電子・振動・回転準位の帰属を行うこと。2.発光のメカニズムについて考察すること。これについては遷移確率等の計算が必要となるため、理論研究者との議論を予定している。
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