Research Abstract |
Amplified Spontaneous Emission (ASE)とは, レーザー光によって反転分布を形成した媒質からの自然放射光が, 媒質自身の誘導放射過程によって増幅された光のことである. I2のE状態から遠赤外領域のASEが発生することが国内外の研究グループによって指摘されてきた. しかし, これらは実験条件の変化による間接的手法をASE発振の根拠としており, 直接ASEの検出にいたっていない. そしてこの時点では衝突緩和の影響は十分に明らかにされていなかった. 今回我々はI2のE状態からの遠赤外領域のASEの直接検出を行った. さらに衝突緩和を評価した. 具体的には, 光-光二重共鳴法を用いて励起された E状態からの遠赤外領域のASEを直接検出した. レーザー光軸上に生じたASEの波長は20 - 26 μmの遠赤外領域であることと, 遷移選択律から, 検出されたASEはE状態からD状態への電子遷移であると帰属された. ASE発振条件下でのE 状態のvE = 0に励起された際に観測される蛍光分散スペクトルには D状態のvD = 0からの強い発光が観測された. しかし, D状態からの蛍光にはそれ以外にvD = 1, 2, 3からの蛍光がわずかに含まれていた. そこで, 系内にArを導入しその分圧を変化させることで, D状態からの蛍光強度の圧力依存性を観測した. その結果, vD = 0からの蛍光強度はArの分圧増加に伴い急激に減少することに対し, vD = 1, 2, 3からの蛍光強度はほとんど変化しなかった. これよりE → Dの緩和過程には, FIR誘導放射(E (vE = 0) → D (vD = 0))と, 衝突緩和(E (vE = 0) → D (vD = 1, 2, 3))の2つの経路が存在することがわかった.
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