2010 Fiscal Year Annual Research Report
励起子ダイナミクスの高度利用による光エネルギー変換反応系の構築
Project/Area Number |
22550026
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
加藤 隆二 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (60204509)
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Keywords | 電荷分離反応 / 過渡吸収分光 / 有機ナノ微粒子 / 励起子分裂 / 磁場効果 |
Research Abstract |
本年度は、基本的な試料の作製技術と計測技術の確立を行った。 試料調製については、溶液滴下蒸発法による結晶成長・自己組織化を利用する方法を検討し、酸化チタンナノ微粒子膜中にペリレン微粒子を成長させた。評価は吸収分光、蛍光スペクトル・寿命測定によって行い、ペリレンニ量体が形成している事からα型の結晶構造を有する微粒子が生成している事がわかった。蛍光寿命は単結晶に比べ、非常に速くなっており、効率の良い消光反応が起こっていることがわかった。これはおそらく酸化チタンへの電子注入反応による消光であると考えている。 電子注入過程の定量的な評価、メカニズムの解明に向けては、有機ナノ微粒子から酸化チタンナノ微粒子膜への電子注入過程を調べる必要があり、過渡吸収分光の時間分解マイクロ波電導度法の高度化をすすめた。過渡吸収分光ではあらたに温度変化を計測できる光学系を構築し、予備的な測定を行った。特に電荷再結合反応の温度依存性からドナーとアクセプター界面の電子状態やナノ構造が重要な役割をしている事が明らかとなってきており、有機微粒子系においても界面に注目して研究を進める指針が得られた。また、時間分解マイクロ波電導度法については、酸素除去雰囲気での計測を可能とする試料セルの設計と作製を行った。 また、高い励起状態が二つの励起子に分裂する過程(Fission:M^**→M^*+M^*)について、その機構を知るために、発光の磁場効果を計測できる光学配置を構築し、アントラセン結晶における既知の磁場効果によって性能を評価した。磁場効果の大きさ、スペクトル形状について定量的な一致があり、十分な測定性能が実証された。そこでFission過程が起こる可能性の高いいくつかの芳香族有機結晶において磁場効果の探索を行ったところ、いくつかの結晶で同様の大きな磁場効果が観測された。
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