2011 Fiscal Year Annual Research Report
励起子ダイナミクスの高度利用による光エネルギー変換反応系の構築
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22550026
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
加藤 隆二 日本大学, 工学部, 教授 (60204509)
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Keywords | 電荷分離反応 / 過渡吸収分光 / 有機ナノ微粒子 / 励起子分裂 / 磁場効果 |
Research Abstract |
酸化チタンナノ微粒子膜にペリレン系材料を析出させた試料において、光励起によって電子注入が起こっている場合には酸化チタン中に伝導電子が発生する。電子注入のメカニズムを知るためには電荷分離の効率、つまり反応収率を定量的に評価することが重要である。そこで、生成する伝導電子を時間分解マイクロ波電導度法によって検出し、生成電子量を定量的に評価し、電子注入効率を見積もる実験手法を確立した。具体的には光励起によって電荷分離が生じ、酸化チタン中に伝導電子が生成する。試料にマイクロ波を照射すると、その電場によって伝導電子の強制的な運動が誘起され、最終的にマイクロ波のエネルギー吸収が誘発される。マイクロ秒の時間領域で起こる再結合よりも速い時間分解計測を行うことで、電子の生成量と再結合速度を決定することができる。まず、酸化チタンナノ微粒子膜に各種色素を吸着させた試料においては定量的な評価が可能であることを示すことができた。さらにペリレン系材料を酸化チタン上に析出させた試料においても、弱い信号強度ながらペリレンの励起によって酸化チタン中に電子が生成することを見いだした。 ペリレン系以外の分子種についての検討も始めた。酸化チタンナノ微粒子膜中での結晶化において、フェニルキサンテン系色素の会合について調べるために、予備的な検討を行った。具体的には分子会合状態と吸収スペクトルの相関について詳細に検討するために、高感度吸収分光装置を用いてスピンコート膜の吸収スペクトルの分子密度依存性を計測する手法を確立した。色素の密度とともに吸収スペクトルが大きく変化することを見いだし、量子力学的な観点から解析をすすめることで、色素の会合状態について多くの情報が得られることを明らかにした。この手法は様々な分子に適用可能であり、酸化チタンナノ微粒子膜中での結晶化機構を詳細に調べるために有用であることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究において、計画していた実験手法、時間分解光・マイクロ波電導度法、発光の磁場効果、を確立できた。また試料の作成においても十分な進展があり、おおむね順調な進展と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となり、これまで開発した実験手法を十分に生かした研究を展開する予定である。特に電子注入効率の評価を中心に新しい光エネルギー変換反応系の提案を目指す。発光の磁場効果が重要な知見を与えることがわかってきたため、当初の予定にはなかった時間分解蛍光分光法と磁場効果を組み合わせる計測を検討中である。
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