2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22550028
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉良 満夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 名誉教授 (40004452)
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Keywords | ジシレン / ジゲルメン / π-σ^*混合モデル / 密度汎関数法 / 高周期典型元素 / ビシクロ[1.1.0]テトラシラン / 結合長異性体 |
Research Abstract |
近年、高周期典型元素化合物の構造や反応性が、対応する同族の第二周期典型元素化合物とは著しく異なる場合のあることが多くの例で示されるようになってきた。これらの特異な構造上の特徴は、高度な理論計算を用いて再現することは可能であり、高周期典型元素の固有の電子的特性であることは明らかである。しかし、これらの特異な結合を定性的に理解し、表現する一般的方法は知られていない。本研究では、高周期典型元素の一見異常な結合を理解し、高周期典型元素化合物の結合と構造の一般性と予見性に優れた定性的理論を構築することを目的とする。前年度までに、(1)トリシラアレンなどの高周期典型元素不飽和結合の理解に、π-σ^*混合モデルが有効であることを見出し、さらに、(2)基本的なジメタレン[H_2M=MH_2;M=Si,Ge]およびそのアニオンラジカルの平面からの変形に、従来よりも一般性の高いπ-σ^*混合モデルを提唱することができた。また、密度汎関数法による精密分子軌道計算によって、モデルの妥当性を検証した。本年度は、主として、ビシクロ[1.1.0]テトラシラン系の異常な異性体の生じる原因について考察した。この系では、長結合異性体、短結合異性体(架橋ケイ素-ケイ素結合の長い異性体と短い異性体)および一重項1,3-ビラジカル異性体の存在が理論的に知られているが、その原因は明らかになっていない。この問題を密度汎関数法計算と摂動分子軌道論を組み合わせて考察し、従来の説とは異なり、異性体の存在にπ-σ^*混合が重要な役割を演じていることを明らかにした。π-σ^*混合モデルは不飽和ケイ素化合物の結合と構造の異常性を理解するうえで、一般性の高い原理であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通り進行し、興味深い成果が得られているが、単独の研究であるため、大きく展開できないことが悩みである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更は特に必要ない。
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Research Products
(7 results)