2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22550031
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
平野 誉 電気通信大学, 大学院・情報理工学研究科, 准教授 (20238380)
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Keywords | ウミホタル / 生物発光 / 化学発光 / イミダゾピラジノン / 化学励起 / ジオキセタノン / 量子収率 / 置換基効果 |
Research Abstract |
ウミホタル生物発光系の発光基質イミダゾピラジノン化合物を研究対象として、発光の高効率化に働く化学励起機構の解明と化学発光の高性能化を目指した。以下の3項目の研究を進め、それぞれ下記の成果を得た。 [項目1]初年度に続き、化学励起過程へのπ共役置換基の効朱を調査するため、効朱的なπ共役置換基であるフェニレンエチニレン(PE)基を導入する分子設計を行った。実際にイミダゾピラジノン環の6,8位を中心にPE基を導入した誘導体を系統的に合成し、有機溶媒中での化学発光特性(反応速度、量子収率、発光極大波長、反応収率)を調べた。この結果、PE基のπ共役が分子骨格自身の反応性を大きく変化させることを見出した。特に、6位にPE基を有する誘導体では発光量子収率が向上することがわかった。PE基が化学励起過程に影響を及ぼす機構の解析は進行中である。 [項目2]化学励起における反応中間体の配座の役割を調べるため、人工反応場でのイミダゾピラジノン誘導体の化学発光性の調査を開始した。まず、疎水的な人工反応場と相互作用できる誘導体として、3,4,5-(トリアルゴキシ)フェニル基をイミダゾピラジノン環の2位に導入した新規な誘導体の合成を行い、良好な化学発光性を有することを見出した。これを踏まえ、トリアルコキシ基のアルキル鎖長を調整した誘導体を用いて、人工反応場内での化学発光性の調査を進めている。 [項目3]イミダゾピラジノン誘導体の化学発光性に及ぼす置換基効果において、未解明であった5位での効果を調査した。まず、基本的なπ共役置換基であるフェニル(Ph)基を5位に導入した誘導体および5位を含めた複数の位置にPh基を有する誘導体合成して、それらの化学発光性を調べた。この結果、5位へのPh基導入は量子収率の低下に働くものの、発光波長の長波長化には有効なことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した3項目に沿って研究を行い、それぞれの目的に対応した化合物の有機合成に成功し、その化学発光性を系統的に調べることができた。従って、順調に研究が進展している。研究成果として、分子構造と化学発光特性の相関から予想しなかった興味深い置換基効果が見出され、理論計算を併用した機構解析を急いでいる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の鍵となる(1)π共役置換基による化学発光特性の制御機構、(2)人工反応場による発光特性の制御機構、(3)未解明置換位置の効果に関する知見が順調に得られており、引き続き研究を進展させる。最終年度を迎えるため、機構解析に重点を置いて研究を進め、研究目的の達成につなげる必要がある。
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