2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子内アリル化を基盤とする海産毒シガトキシンおよびブレビシンの合成研究
Project/Area Number |
22550036
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
門田 功 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (30250666)
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Keywords | ポリ環状エーテル / 海洋産天然物 / 全合成 / シガトキシン / 分子内アリル化 / 閉環メタセシス / グラブス触媒 / アリルスズ |
Research Abstract |
本研究では、海洋産の渦鞭毛藻が生産するポリ環状エーテル類の量的供給および生理活性発現機構の解明を目的とし、その実用的な合成ルートの開発について検討した。これらの化合物は、イオンチャンネルに作用して様々な生理活性を示すことが知られており、その活性発現機構とともに、チャンネル研究のための分子プローブとしても注目されている。しかし、多くは超微量成分であるため、十分な研究が行われていないのが実情である。本研究では、ルイス酸による分子内アリル化反応とグラブス触媒による閉環メタセシスを組み合わせた収束的合成法を活用し、ポリ環状エーテル類の効率的全合成を目指す。 本年度は、引き続きシガトキシンの合成研究を進め、分子右側のフラグメントであるH-M環部の合成について検討した。まず、アスコルビン酸より文献記載の方法で合成した不飽和エステルに対して有機銅反応剤の付加およびエステルエノラートのアルキル化によって2つのメチル基を立体選択的に導入した。さらに増炭した後に、カルボニル基を導入、続いて酸処理によってアセトナイド保護の除去とスピロアセタール化を行い、LM環部を合成した。Evansアルドールによって炭素鎖を導入後、ヨウ化サマリウムに夜ラジカル環化によって7員環を構築した。このようにして合成したKLM環部と別途合成したH環部をエステル縮合した後に、数段階の操作でアリルスズを有する環化前駆体へと変換した。これに対してルイス酸を作用させることで分内アリル化を行い、J環を構築した。さらに閉環メタセシス反応によって8員環を構築し、目的のH-M環部の合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、2年目においてシガトキシンの全合成に必要な左右二大フラグメントの合成に成功している。鍵反応である分子内アリル化がこのような大きな分子にも適用できるかどうかが懸念されたが、期待通り立体選択的な反応が進行し、目的化合物を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては、それぞれのフラグメントの合成ルートを精査し、大量スケールでの合成による量的供給を行うことである。同時に、合成した左右フラグメントの連結についても検討する。これについては、構造を簡略化したモデル化合物を用いて予備実験を行い、最適化を行う。この知見をもとにシガトキシンの全合成を達成する。
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