2011 Fiscal Year Annual Research Report
新世代の蛍光検出CDによるタンパク質立体構造の動的ピンポイント解析法の開発
Project/Area Number |
22550038
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
根平 達夫 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 助教 (60321692)
|
Keywords | 円二色性 / タンパク質 / 蛍光 / CD |
Research Abstract |
前年までの研究で、蛍光ラベルしたカルモジュリン(DNS-CaM)のFDCDスペクトルは、申請者らの新世代測定装置を用いれば「にせFDCD信号」のない状態で得られ、そのときFDCDは広い波長領域でCDとは異なる変化を示した。これを受け当該年度は、FDCDスペクトルとタンパク質立体構造の関連を、以下に示す3つの方法で調べた。 (1)DNS-CaMに結合ペプチドを加えたときの構造変化をタンパク質の座標データから解析した結果、FDCDスペクトルに反映されるのが、蛍光ラベルと、タンパク質中の芳香族アミノ酸の位置関係であることが示唆された。ただしFDCDスペクトルから、一義的にタンパク質の構造まで決めることはできなかった。 (2)DNS-CaMでFDCDとCDは一致しないが、ポリペプチド主鎖のない合成モデル分子のFDCDとCD両スペクトルが一致した。すなわちFDCDスペクトルにはポリペプチド主鎖の情報が反映されず、そこがCDスペクトルとの差異となることを実験的に証明した。 (3)タンパク質変性の際、二次構造を保った中間体(MG状態)を経由することが知られているミオグロビンについて、二次構造が変性するまで変化の見られないCDスペクトルとは異なり、三次構造が段階的に変化する様子がFDCDスペクトルによりはっきりと観測された。すなわち、CDスペクトルからは一般にタンパク質の二次構造に関する情報が得られるのに対して、FDCDでは三次構造の変化を追跡できることを明らかにした。 この結果から、FDCDスペクトルによってタンパク質の立体構造変化を解析できることは証明された。一方、本研究課題で目指す「ピンポイント解析」に必要な部位特異性については、さらにラベル化位置の効果を調べる必要があると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請に示した2つの課題のうち、CaM結合ペプチドを用いたCaMの構造変化追跡は順調に進展している。しかし、モデル化合物の合成によるFDCDシグナル変化機構の証明では、単純モデルの合成には成功したものの、モデルの高度化に手間取り、さらに理論計算では配座の多様性のため再現性が悪かったため、順調な進展とは言えないことから、やや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
FDCDスペクトルのタンパク質への適用例が少ないので、(1)できるだけ多くのタンパク質に適用するとともに、(2)タンパク質の構造とFDCDシグナルの相関について、系統的なモデルを使って詳しく検討したい。特に(2)について、ここまで有機合成的な方法で検討してきたが、進展状況は必ずしも良くない。今後、モデルを高度化する際に合成が律速となり系統的なライブラリーが完成しない可能性もあるので、固相合成法によるモデルペプチドの合成も検討したい。
|