2010 Fiscal Year Annual Research Report
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22550049
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
張 浩徹 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (60335198)
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Keywords | 原子価互変異性 / コバルト錯体 / 光誘起電子移動 / 融解 / 結晶化 / 双安定性 / 金属錯体 / 光誘起電子移動 |
Research Abstract |
これまでに固体や液体、溶液における化学的、電気化学的、熱的及び光により誘起される電子移動に関する膨大な研究がされ、多くの物質的、現象論的、理論的知見が得られた。電子及び電子移動の理解は、物質やそれが発現する諸現象や機能に関する理解を深める上で絶え間なく発展すべき基本的課題である。その根底には、多くの分子や分子集団が系の自由エネルギーを最小にする方向で結合をくみ上げ、分子構造を形成し、最も安定な電子配置を達成する自然の選択が存在する。従って通常の分子内での電子配置の再配列、結合の再構築を行うためには大きなエネルギーを必要とする。一方本研究で対象とする金属と酸化還元活性ジオキソレン配位子はエネルギー的に近接した金属由来のd軌道と配位子由来のπ軌道を有する結果、僅かな外場により分子内電子移動が生じ、異なる電子配置を有する二つの(若しくはそれ以上の)互変異性体を形成する。この僅か一電子の再配置は、スピン、電荷分布、電気双極子、極性、分子構造の変化をもたらす。本研究では、「この単一分子上での変化は、適切な分子集合体を構築することでマクロ世界へと転写しうる。またこれは光によっても引き起こされる」という発想のもと研究を展開した。本研究の構成は、光誘起融解及び結晶化の(1)実現と(2)制御からなる。そのための実験としては、既に合成及び熱的な同期変換に成功している前述のコバルト錯体等を用いた光照射実験を行うと共に光誘起融解及び結晶化実現のための物理化学的条件を見出し制御する研究を行うこととした。本研究では、光融解・結晶化の実現のために、low-spin-[Co^<III>(DTBSQ)(DTBCat)(C120py)](DTBSQ=3,6-di-t-butylsemiquinonate;DTBCat=3,6-di-t-butylcatecholato;C120py=3,5-didodecyloxy-pyridine)の薄膜結晶に対し、3Kにおいて532nmのパルス光を照射した所、high-spin-[Co^<II>(DTBSQ)_2(C120py)]の光生成を確認すると共に、この光誘起相が250Kという極めて高い温度域まで存在しうることを明らかにし、光融解・光結晶化実現のための礎を築く実験結果を得ることに成功した。
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