2011 Fiscal Year Annual Research Report
各種高原子価金属錯体の詳細な電子状態と反応性の相関
Project/Area Number |
22550055
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
島崎 優一 茨城大学, 理学部, 准教授 (80335992)
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Keywords | 酸化・還元反応 / 酸化数 / フェノキシルラジカル / 金属イオン |
Research Abstract |
金属錯体の酸化・還元反応において「金属錯体の形式的な酸化数」と「金属錯体の実際の酸化数」が異なる場合が報告されており、例えば、一級アルコールをアルデヒドに変換する銅含有酵素ガラクトースオキシダーゼの活性型は銅(II)-フェノラート種が一電子酸化された状態であるが、銅(II)-フェノキシルラジカル種の生成が示唆されている。このような点を踏まえ本研究では、様々な位置にメトキシ基を導入したsalen誘導体を配位子とした銅(II)の一電子酸化体の合成、結晶化を行い、それらについての電子構造を詳細に検討した。 本年度はメトキシ基を導入した各種salen誘導体を配位子とした銅(II)錯体の一電子酸化体の合成、結晶化を行い、それらの電子構造を詳細に検討した。結晶構造解析ならびに様々な物理化学的手法から得られた結果から、メトキシ基の導入位置により一電子酸化体の電子状態が大きく異なり、ρ-メトキシフェノールを導入したサレン型錯体は銅(II)-フェノキシルラジカルであるのに対し、o-フェニレンジアミンにメトキシ基を導入した錯体はo-フェニレンジアミンがラジカルとなった銅(II)-配位子ラジカルであることを見いだした。o-フェニレンジアミンがラジカルとなった銅(II)-配位子ラジカルの知見は初めてであり、このメトキシ基の位置による大きな電子状態の違いは、メトキシ基がラジカル電子を局在化する大きな因子であることが明らかとなった。さらに、これらの結果から、銅(II)-サレン型錯体の一電子酸化体には少なくとも3つの異なる電子状態、銅(III)-フェノラート、銅(II)-フェノキシルラジカル、銅(II)-フェノキシル以外の配位子ラジカルの3つの電子状態があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属フェノラート錯体の一電子酸化体について、形式上、金属イオンが酸化された高原子価種のみを考えることが多かっただろうが、本研究から、少なくとも銅(II)-サレン型錯体の一電子酸化体においては少なくとも3つの異なる電子状態、銅(III)-フェノラート、銅(II)-フェノキシルラジカル、銅(II)-フェノキシル以外の配位子ラジカルの3つの電子状態があることを明らかにしたことから、金属錯体の酸化は多くの状態が可能であることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、少なくとも銅(II)-サレン型錯体の一電子酸化体においては少なくとも3つの異なる電子状態、銅(III)-フェノラート、銅(II)-フェノキシルラジカル、銅(II)-フェノキシル以外の配位子ラジカルの3つの電子状態があることを明らかにしたが、これらの電子状態の違いをさらに理解するために、異なった電子状態の一電子酸化体について、様々な有機基質との反応性について調べ、形式的に同じ電子状態であっても、電子状態が異なる場合、どのような点が異なるかについて詳細に検討する。
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Research Products
(11 results)