2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22550057
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
野崎 浩一 富山大学, 大学院・理工学研究部, 教授 (20212128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩村 宗高 富山大学, 大学院・理工学研究部, 講師 (60372942)
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Keywords | リン光 / 熱失活 / 活性化体積 / dd状態 / 無輻射失活 |
Research Abstract |
今年度は、高圧下で発光測定を行うための高圧分光セルを開発した。特に微弱発光測定に適するように、サファイア光学窓を3面とし、観測方向には大きな窓としたことが技術的に難しかった点であった。このセルは、-20~200℃の広い温度範囲において、0.1~400MPaの圧力範囲の発光寿命やスペクトルを高い精度で観測することが可能である。開発したセルの性能を検討するために、ルテニウム(II)トリスビピリジン錯体のリン光状態について、dd状態を経由した熱的失活の活性化体積を150℃において決定したところ、文献値と同一の値が得られた。本セルではこれまでよりも、より高い温度域での圧力変化の測定が可能であるため、活性化体積を求めるための複雑な補正を省くことができる。今後、この特長を活かして様々な遷移金属錯体のリン光状態の熱失活の活性化体積を決定する。 青色リン光性の錯体であるイリジウム(III)トリスピラゾール錯体について、dd状態を経由した熱的失活過程のマトリックス依存性を検討した。Facial体とmeridional体とでは、全く異なる速度論パラメータを有することが分かった。発光強度に対する溶媒効果はほとんど観測されなかったが、剛性マトリックスである有機ポリマー中では、イリジウム錯体の発光強度が著しく高くなることを見出した。減衰速度の温度依存性より、剛性マトリックス中では、頻度因子が小さくなることが明らかになった。 光学活性な配位子をもつルテニウム(II)オキサゾリン錯体のリン光寿命について検討したところ、Δ体とΛ体とでは発光寿命が大きく異なっていることを見出した。DFT計算の結果、Δ体とΛ体とで、リン光状態に関与する分子軌道が異なっており、Δ体はΛ体よりもリン光状態で大きく構造が変形することが、寿命の違いの原因であることが判った。
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