2010 Fiscal Year Annual Research Report
自然界の炭素固定を担うニッケル酵素類のモデル構築による反応機構の解明
Project/Area Number |
22550059
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松本 剛 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教 (50311717)
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Keywords | ニッケル酵素 / アセチルCoA合成酵素 / メチルCoM還元酵素 / チオラート / 炭素固定 / メタン生成 |
Research Abstract |
平成22年度はアセチルCoA合成酵素(ACS)とメチルCoM還元酵素(MCR)のモデル研究を行った。ACSモデルについては、これまで二核ニッケルモデル錯体に導入していたジアニオン性のジアミンジチオラート配位子dadt^<Et>から、テトラアニオン性のジアミドジチオラートmbpaへの変更を検討し、酵素モデル反応を行う上で有用な出発物質となるニッケル二核錯体(Et_4N)[Ni(mbpa)NiCl(PPh_2Me)]の合成に成功した。この錯体とベンゼンチオラートの反応を検討した結果、クロリドとホスフィン配位子はいずれも置換活性であることがわかった。メチルアニオン種との反応も検討したが、原料錯体のTHFへの溶解度が低いため、反応が不均一に進行してしまい、メチル基の導入には至っていない。今後、溶解度を向上させるべく対カチオンを変更し、検討を続ける予定である. MCRについては、酵素活性中心のニッケルに配位しているコリノイドのモデルとして、酵素と同様に平面N_4配位子となるサイクラムをニッケルに導入し、不活性状態の構造モデルとなるメチルCoMスルホナート配位ニッケル(II)サイクラム錯体を合成した。その分子構造はX線結晶構造解析によって明らかにした。ニッケル(II)状態では酵素反応は全く進行せず、安定に単離されたことから、活性状態では還元状態のニッケル(I)や高酸化状態のニッケル(III)などの酸化状態をとるものと考えられる。そこで、分子内にメチルチオエーテル部位を持つニッケル(I)サイクラム錯体を合成し、Me-S結合活性化を検討した。その結果、Me-Sがラジカル的に切断され、かさ高いチオール存在下では良好な収率でメタンが生成した。反応機構の詳細については、今後検討を継続する予定である。
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Research Products
(12 results)