2011 Fiscal Year Annual Research Report
自然界の炭素固定を担うニッケル酵素類のモデル構築による反応機構の解明
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22550059
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松本 剛 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教 (50311717)
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Keywords | ニッケル酵素 / アセチルCoA合成酵素 / メチルCoM還元酵素 / COデヒドロゲナーゼ / チオラート / 炭素固定 / メタン菌 |
Research Abstract |
平成23年度は前年度に引き続きアセチルCoA合成酵素とメチルCoM還元酵素のモデル研究を行った。アセチルCoA合成酵素モデルについては、テトラアニオン性のジアミドジチオラートmbpaをもつニッケル錯体とNi(PPh_2Me)_2(STip)(C_6F_5)との反応を検討し、酵素反応中間体モデルとなるニッケル二核錯体(nBu_4N)_2[Ni(mbpa)Ni(C_6F_5)(STip)]の合成に成功するとともに、その構造を初めてX線解析によって明らかにした(H_4mbpa=N,/N'-(3-mercapto-3-methylbutyryl)-O-phenylenediamine,Tip=2,4,6-triisopropylphenyl)。また、mbpa配位子のフェニレン架橋部位をエチレン架橋に変えたmbea配位子を合成し、同様の反応による二核ニッケルモデル錯体の合成を開始した。 メチルCoM還元酵素については、酵素活性中心のニッケルに配位しているコリノイドのモデルとして、酵素と同様に4つのNが平面で配位できるテトラアザマクロサイクルを選択し、これらのN上にメチルチオエーテル部位を導入した2種類の配位子を設計し、活性状態のモデルとなるニッケル(I)錯体を合成した。これらの錯体はいずれも分子内のMe-S結合をホモリティックに活性化し、メタンを与えることがわかった。そこで反応の詳細を明らかにすべくいくつかの検討を行った。メタンの由来を明らかにする目的で、チオエーテル上のメチル基を重水素化ラベルした錯体を合成し、同様に反応を行ったところCD_3Hの生成が確認され、Me-S切断によってメタンが生成することが確認された。またかさ高いチオール共存下ではメタンの収率が向上し、チオールがメタン生成の際のH源となることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的としているアセチルCoA合成酵素のモデル合成は、予定通り順調に進捗している。反応中間体となるメチル基とチオラートをニッケル上に併せもつ錯体の合成についても予備的検討を行い、その生成を示唆する結果が得られている。メチルCoM還元酵素の反応機構解明についても、Ni(I)が活性種となることを示唆する結果が得られ、順調に進捗している。COデヒドロゲナーゼのモデル合成も予定通り研究を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
アセチルCoA合成酵素モデル構築については、ジアニオン性ジアミノジチオラート型N_2S_2配位子をもつ二核ニッケル錯体の合成手法に倣い、テトラアニオン性のジアミドジチオラート配位子を導入した二核錯体の合成を検討し、Ni(II)-Ni(II)の酸化状態をとる酵素反応中間体モデルの構築を達成した。一方、実際の酵素反応にはNi(I)やNi(O)種が関与すると考えられるため、これまでの検討課題に加え、新たに低酸化型のモデル錯体の構築を進める必要がある。適切なNi(I)およびNi(O)前駆錯体を開拓し、還元状態のモデルとして二核Ni(II)-Ni(I)およびNi(II)-Ni(O)錯体の合成を検討する。他の酵素モデルの検討については、当初の実施計画に基いて順次遂行する。
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