2011 Fiscal Year Annual Research Report
非ヘム鉄型機能制御を付与した遷移金属活性中心による酸素活性化
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22550060
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
舩橋 靖博 名古屋工業大学, 工学研究科, 准教授 (00321604)
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Keywords | 酸素活性化 / 二核銅錯体モデル / チロシナーゼ / 反応機構解析 / 非ヘム鉄型モデル / 非ヘム鉄型オキシゲナーゼ / 高原子価マンガン錯体 |
Research Abstract |
生体内においてType III銅と呼ばれる二核の銅中心を有するヘモシアニンとチロシナーゼは、酸素運搬や基質の酸化のために酸素分子と結合してμ-η^2:η^2-peroxo種を形成することが分かっている。最近、我々は安息香酸イオンで架橋された新しいμ-η^2:η^2-peroxo種を合成することに成功し、bis(μ-oxo)種との間の平衡が、安息香酸イオンの軸配位によりμ-η^2:η^2-peroxo種に偏ることを初めて示した。これは生体内における0-0結合の形成と開裂の制御を理解するうえでも重要な知見である。 ここではまず本系は、チロシナーゼと基質であるL-チロシンの反応における拮抗阻害剤として安息香酸が働くことと関連が深いはずである。既に我々は、二核銅-酸素錯体にチロシンモデルとなるフェノール誘導体が結合したperoxo種の分光学的な検出に成功しているが、次いで反応活性なフェノール誘導体が収率良くカテコール誘導体に変換される際に、同様なperoxo種の生成が起こること分光学的な検出した。このとき脱プロトン化したフェノール誘導体が安息香酸イオンと同様に、その軸配位によりμ-η^2:η^2-peroxo種を生成している。さらに基質モデルである脱プロトン化したフェノール誘導体と拮抗阻害剤である安息香酸イオンは、いずれも還元状態の銅中心に作用して、酸素分子との反応性を高めることが分かった。特に前者の系の結果は、基質であるかチロシンの結合によってチロシナーゼの酵素活性が高まることを示唆している。 二核鉄酵素活性中心モデルの検討と関連して、単核の非ヘム鉄型オキシゲナーゼモデルの検討を行い、鉄(II)錯体と過酢酸の反応をstopped flow-rapid scanning法により吸収とIRスペクトルの時間分解測定を行うことにより、酸化活性種とみられる中間体の分光学的な検出に成功した、これはマンガンの系にも応用され、Fe(IV)=0とMn(IV)=0についてESRスペクトルなども用いて、これらを相補的に理解するための第一段階のデータを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展している部分もあるが、チロシナーゼそのものの検討と混合原子価二核銅酸化活性種の検討は、分光学的な検出をするもののキャラクタライズが困難な状況にある。鉄錯体の系の発展として予定より早くマンガン錯体の系に進んでいるが、単核錯体の系に留まっているところを打開したい。
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Strategy for Future Research Activity |
チロシナーゼそのものの検討と混合原子価二核銅酸化活性種の検討は、初歩的な実験などの準備段階では進んでいるが、設備やサンプル等の問題もあるので共同研究を積極的に進めるほか、人的資源をより投入して解決する。鉄錯体とマンガン錯体の系は合成が鍵であり、相補的なデータを得るために始めたマンガンの系では多核錯体の合成に成功しているので鉄錯体の系にフィードバックできる見込みである。前年度に合成技術が格段に進歩したところが今年度の試行錯誤に活きて更に飛躍することを期待している。
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Research Products
(12 results)