2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖のアノマー異性を用いた金属錯体の普遍的光学活性制御
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22550063
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西岡 孝訓 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (10275240)
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Keywords | N-ヘテロ環カルベン / ジアステレオ選択性 / 糖 / アノマー / 立体配座 |
Research Abstract |
アセチル保護したD-β-グルコピラノシル基で修飾したN-ヘテロ環カルベン(NHC)配位子を、ピリジン環の2,6位にメチレン基を介して導入した配位子(bagip)を用いて、ニッケル錯体を合成した。このような錯体ではNHC部位の傾きとメチレン架橋部位の配置により、配位子のねじれによる光学活性を持つが、今回合成した錯体では、光学活性なD-グルコピラノシル基を導入しているため、ジアステレオマーとなる。しかし、NMR分光、円偏光二色性、X線構造解析等の測定により、溶液中及び固体中で一方のジアステレオマーのみしか存在していないことが明らかとなり、D-β-グルコピラノシル基の導入の効果により、ニッケル錯体がジアステレオ選択的に生成していることがわかった。 また、配位子に簡便に様々な糖を導入するため、クリックケミストリーを導入した。1-(2-プロピニル)イミダゾールや1-エチニルベンズイミダゾールにアセチル保護したD-β-グルコピラノシルアジド、D-α-マンノピラノシルアジド、D-β-ガラクトピラノシルアジドを銅触媒存在下で反応させ、糖修飾トリアゾール環をもつイミダゾールおよび、ベンズイミダゾールを得た。これらにヨウ化メチルを反応させ、NHC配位子前駆体とした。このように様々な糖をNHC配位子に導入する手法を確立できたことは、糖を導入した新しい金属錯体触媒や医薬品の開発への応用につながると考えている。さらにD-β-グルコピラノシル基で修飾したトリアゾール基を持つNHC配位子を用いて、イリジウム錯体の合成を行い、イリジウムまわりの光学活性の制御を試みたが、ジアステレオ選択性はよくないことが判明した。これは、錯形成時に、配位子の糖部位が金属中心から離れてしまうことが原因と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖修飾ピンサー型NHC配位子を用いたニッケル錯体のジアステレオ選択的合成に成功した。また、糖修飾NHC配位子前駆体の合成にクリックケミストリーを導入し、各種糖部位を配位子に導入する手法を確立した。しかし、糖修飾ピンサー型NHCニッケル錯体ではβ型しか合成に成功しておらず、光学活性制御のための比較に用いるα体の合成を急ぐ必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
クリックケミストリーの導入に成功したので、これを用いてピンサー型の配位子前駆体を合成し、立体制御を試みる。さらに、キレート型NHC配位子に糖を導入することでも立体制御を行う。トリアゾール-NHCの系では、糖の位置が問題となったため、より金属中心に糖が近づくように、トリアゾール基の2位の窒素にアルキル基を導入しNHC化することを試みることで、解決したいと考えている。 ピリジン環を持つピンサー型NHCニッケル錯体では、β体のみ合成に成功しているが、α体は得られていない。引き続き合成を試みるが、脱保護した配位子前駆体を利用することも考えている。
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Research Products
(10 results)