2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体内金属イオン検出のための新規な蛍光共鳴エネルギー移動型化学センサーの開発
Project/Area Number |
22550068
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
川上 淳 弘前大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (60261426)
|
Keywords | 金属イオン / 蛍光共鳴エネルギー移動 / 蛍光性化学センサー / 2-アミノトリプタンスリン / 超分子化 |
Research Abstract |
新規蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)型化学センサーとして、ピレン又は7-置換クマリンをエネルギードナー(D)、2-アミノトリプタンスリンをエネルギーアクセプター(A)とし、DとAを長さの異なるポリエーテル鎖((OCH_2CH_2)_nO;n=1,2,3,4,5,6)やポリメチレン鎖((CH_2)_n;n=1,4)で繋いだ幾つかの系を合成し、その性質について調べた。 その結果、全般的にスペーサーの短い系、即ちD,A間距離の短いもの程、効率よく分子内FRETが起こることがわかった。しかし、D,Aへのスペーサーの導入部位の違いによっては、n=1の系で、立体障害等によりD,AがFRETに適した配向をとることが難しく、FRETが起こらない場合や、D,A間距離が近接しているために、D,Aの衝突に伴う熱的失活によると思われるD,A両方の蛍光消光を示す系も観測された。更に、FRETよりも光誘起電子移動(PET)による蛍光消光が優先する系も見られた。 金属塩添加による実験では、トリプタンスリンの2-位のアミノ基にスペーサーを導入してDのピレンと繋いだ系では、特にHg^<2+>,Cu^<2+>,Fe^<2+>,Fe^<3+>を添加した際に、FRET-onからFRET-offへの挙動、即ちAの蛍光消光とDの蛍光増大という顕著な蛍光変化が観測され、報告例の少ないHg^<2+>やCu^<2+>に対する蛍光"発光型"センサーとして応用できることがわかった。一方、8-位の酢酸基にスペーサーを導入してDのピレンと繋いだ系では、Hg^<2+>,Cu^<2+>,Fe^<3+>,Al^<3+>を添加することで、Aの著しい蛍光消光が観測されたものの、Dの蛍光増大は観測されず、Dから無蛍光のAの金属錯体へのFRETが、引き続き起こっていることが示唆された。 以上のように、新規金属イオン用FRET型化学センサーの開発において重要となる、幾つかの知見が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幾つかの新規金属イオン用FRET型化学センサーの合成に成功しており、FRET挙動や金属イオンの蛍光センシングに関する知見が得られている。
|
Strategy for Future Research Activity |
新規金属イオン用FRET型化学センサーであるピレン(エネルギードナー,D)-2-アミノトリプタンスリン(エネルギーアクセプター,A)の系を中心に詳細な検討を行進めてきたが、水溶液中で強い蛍光を示すウンベリフェロンを含む7-置換クマリン(D)-2-アミノトリプタンスリン(A)の系についても、今後は詳細に検討して行く予定である。また、これまでのin vitroでの実験に加えてin vivoでの実験へと展開できたらと考えている。
|
Research Products
(7 results)