Research Abstract |
本研究は,水系溶媒中におけるポリエーテルの分子認識能に焦点をあて,単分子系ポリエーテルと分子集合体系ポリエーテルによる包接現象を対象として,キャピラリーゾーン電気泳動における分離選択性の発現因子の解明を目的とする.分子間相互作用である包接現象は,キャピラリー電気泳動法での電気泳動移動度の変化を用いて,その反応平衡を解析した. 本年度の研究では,基本的な反応である環状ポリエーテルによるアミノ基の包接反応から着手した.環状ポリエーテルには18-クラウン-6-エーテルを用い,o-,m-,p-フェニレンジアンモニウムの包接平衡を解析した.三種類のフェニレンジアンモニウムの中では,p-フェニレンジアンモニウムで大きな包接定数が得られた.o-フェニレンジアンモニウムでは,隣接するアンモニウム基によりクラウンエーテルの包接は立体障害をうけると予想され,本法では解析できないほど小さな包接定数であった,また,フェニルアルキルアンモニウムの包接では,アルキル鎖長の伸長とともに包接定数が大きくなり,水溶媒中における疎水性相互作用が示唆された.分離分析の観点からは,環状ポリエーテルを用いることで,キャピラリー内壁への吸着を抑制することができた. また,ポリエーテル部位を有する非イオン界面活性剤のBrij 58を用い,分子集合体ミセルとしての結合反応選択性を検討した.陽イオンであるアルキルピリジニウムイオン,アルキルイミダゾリウムイオンの結合定数は,同程度の分子サイズを有する陰イオンよりも小さいことがわかった.ミセル中のポリエーテル部位が泳動液中のナトリウムイオンを包接しているため,陽イオンの結合反応は実際にはイオン交換反応であり,陰イオンの結合とは反応機構が異なるために結合定数に差異が出ることを明らかにした.
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