2010 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内微小器官局在化蛍光プローブを用いた正味の細胞内抗酸化活性測定
Project/Area Number |
22550087
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
塩路 幸生 福岡大学, 理学部, 准教授 (80291839)
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Keywords | 可視化 / 細胞・組織 / ストレス / 抗酸化 |
Research Abstract |
ミトコンドリアでの活性酸素種(ROS)の過剰産生やそれにともなう漏出は、動脈硬化やアルツハイマー病さらには癌の転移に重大な寄与をする。本研究は、細胞内微小器官に局在化する複数のROS感受性蛍光部ローブを組み合わせて用いることでROSの細胞内での過剰産生計測法を提案するものである。本方法を用いれば抗酸化剤の細胞膜透過性と細胞内微小器官まで移行する能力とを含めた正味の細胞内抗酸化活性の測定が可能になる。 まず、細胞内抗酸化活性測定法を確立するため、これまでに合成したミトコンドリアに局在化する過酸化脂質感受性蛍光プローブを用い、ミトコンドリア内部で起こる脂質過酸化物の形成を新たに合成した新規のアスコルビン酸誘導体がどれほど抑制するかを見積もった。その結果、ミトコンドリアに局在化するアスコルビン酸誘導体の過酸化脂質生成に対する抑制効果が高いことが明らかになった。すなわち、本測定法は抗酸化剤の細胞内での分子動態も評価できることが実証された。 次に、可視光領域に吸収をもつ抗酸化剤に対してもその細胞内抗酸化能の測定を可能にするため、近赤外領域に蛍光波長をもつミトコンドリア局在型の過酸化脂質感受性蛍光プローブの合成を行った。はじめに、過酸化脂質センサーとしてトリアリールホスフィノイル基をもつプローブの合成を行ったところ、目的とする蛍光プローブは過酸化物と反応してもわずかな蛍光強度の増加に留まった。これは、分子軌道計算の結果から考えてセンサー部位の基底状態エネルギーが蛍光団の基底状態と励起状態エネルギー差に適応せず、分子内電子移動反応がうまく起こらないためであると思われる。今後は、センサー部位の置換基変換によって、エネルギー差を調節した蛍光プローブを合成する。
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