2011 Fiscal Year Annual Research Report
閾値エネルギー解離質量分析法を用いた低分子有機化合物同定法の開発
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22550090
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中村 健道 独立行政法人理化学研究所, 物質構造解析チーム, 先任研究員 (10360611)
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Keywords | 閾値エネルギー解離 / タンデム質量分析法 / 環状ペプチド化合物 / 構造解析 / プロダクトイオン / モバイルプロトン / イオンモビリティー / エネルギー分解 |
Research Abstract |
メタボローム解析などにおいて化合物の識別・同定を行う際,精密質量の測定値だけでは異性体の判別は不可能であり,フラグメンテーション情報の利用が必須となる.EIマススペクトルとは異なりMS/MSスペクトルは装置依存性が大きいため,透過型タンデム質量分析装置とイオントラップ型質量分析装置によるMS/MSデータの比較等,クロスプラットフォームのパターンマッチングは上手く機能しない.本研究では,最低閾値エネルギー反応を化合物の特性データとして用いることでMS/MSスペクトルパターンに、依存しない低分子有機化合物の識別・同定法の構築することを目的としている.本年度は,透過型質量分析装置(三連四重極型タンデム質量分析装置,磁場型タンデム質量分析装置)に加え,四重極飛行時間複合型タンデム質量分析装置を用い,種々低分子有機化合物の最低閾値エネルギー解離反応経路を探索,アミノ酸等の基本代謝物の最低閾値解離反応のデータベース化を試行した.中・大環状有機化合物ではフラグメントイオンの生成過程に開環による異性化が含まれるため,閾値解離タンデム質量分析法のみでは反応経路解析が困難である.この問題の解決策としてイオンモビリティー分析が有効であるかを検討,閾値解離タンデム質量分析法とイオンモビリティー分析を組合せたアプローチを用いることにより反応経路の解析が可能であることを見出した.閾値解離法においては低分子有機化合物のイオン化において基底状態近傍のイオンを生成するため,最も緩和なイオン化法の一つであるエレクトロスプレイイオン化法を用いる.本研究の過程において,芳香環に共役したケイ素リン二重結合を有する化合物のイオン化時,微量ヨウ化物イオンが関与する酸化反応によってヨウ素付加体が生成することを見出した.スプレイ電極における特異な酸化反応が化合物定性に影響を及ぼす興味深い例である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最小閾値解離反応を利用しフラグメンテーション反応チャンネルの違いに基づく異性体識別が可能であることを確認さらに本法をイオンモビリティー分析と統合することにより,フラグメンテーション経路内でのイオン異性化過程解析の可能性が開けた.
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Strategy for Future Research Activity |
本法がメタボローム解析等の現場で活用されていくための一つの鍵となるであろう従来型質量スペクトルデータベースとの統合設計を進めていくのと同時に,本法の利点が最大限に生かせる応用分野の一つである一細胞分析の研究グループとの連携を深めていく.並行して,イオンモビリティー分析の併用によるイオンの異性化過程解析という新たな糸口を個々の最小閾値解離反応チャンネルのより詳細な理解に基づいた化合物同定法の高精度化へとつなげていくために,他の解離法を用いた有機イオンの反応解析を行っているグループとの連携をも図っていく.
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Research Products
(3 results)