Research Abstract |
近年,有機エレクトロニクスの基盤物質としてのπ電子豊富化合物の探索研究が盛んに行われている.直線型多環芳香族炭化水素であるアセン類を主とした研究結果をもとに実用化が進む中,高い電子移動度とともに化学的・物理的安定性の高い分子の登場が待ち望まれている.本研究では,大量供給可能な高効率合成法により新しいπ電子共役型を設計・合成することを目的とする. 本年度は,π電子共役型構造を有するアントラセン二枚を,Si-Si結合からなるσ結合(σsisi)により二重架橋し,σSiSi-π共役構造を構築することで,三次元的に共役系を拡張した分子,ジシラニル二重架橋ビスアントラセン^<Si>DPBA(disilanyl double-pillared bisanthracene)を設計・合成した.^<Si>DPBAは1,8-ジョードアントラセンをジリチオ化した後,1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラメチルジシランと反応させることで,一工程,50%と簡便かつ比較的良好な収率で合成でき,またオリゴマー等の副生成物はエーテルで洗浄するのみで除け,純品をグラム単位で得ることができる.X線結晶構造解析により,^<Si>DPBAはアントラセンがアンチ型に配向した階段状の分子構造をもち,CH-π相互作用をもととした二次元ネットワーク型の充填構造を有することを明らかにした.紫外可視吸収,蛍光スペクトルおよび,密度凡関数法による分子軌道計算から^<Si>DPBAは,Si-Si結合とアントラセン間のσ-π共役により2つのアントラセンが共役していることを見出した.さらに,緑色りん光OLEDデバイスの電子,正孔輸送相としての特性を調べたところ,両極性キャリア輸送材料として優れた特性を有することを見いだした.
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