2011 Fiscal Year Annual Research Report
高機能性脱水素錯体触媒を活用する均一系可逆的脱水素化/水素化反応の開発と展開
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22550098
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 良平 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (40115960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 健一 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (80293843)
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Keywords | 有機金属錯体触媒 / 脱水素化反応 / 水素化反応 / イリジウム錯体 / 含窒素複素環 / 水素貯蔵システム / 有機ヒドリド |
Research Abstract |
水素は環境調和生の観点から、クリーンエネルギーとして重要であり、その利用技術の開発は大変重要である。常温で気体で爆発性のある水素の高度利用のためには、効率的かつ安全に水素を貯蔵できるシステムの構築が必要不可欠である。本研究は、有機化合物を貯蔵媒体とする有機ヒドリド系水素貯蔵システム構築の基盤となる有機化合物の可逆的な脱水素化と水素化反応の両方を効率的に達成する有機金属触媒の創製と可逆的触媒反応系の開発を目的としている。 本研究者らは、平成22年度の研究において、機能性ビピリジン系配位子を有する新規中性錯体Cp*Ir(2,2'-ビピリドナート)(L)(補助配位子Lはアニリン、ピリジン、ジメチルスルホキシド,水)を創製し、2,6-ジメチルデカヒドロ-1,5-ナフチリジン(水素含有率:6%)の触媒的脱水素化を行い、キシレン還流条件下で5当量の水素ガスの発生を伴って2,6-ジメチル-1,5-ナフチリジンへとほぼ定量的に変換されることを見出した。平成23年度はこれを基盤として、1)より高性能の錯体触媒の設計と合成、2)水素含有率の高い2,6-ジメチルデカヒドロ-1,5-ナフチリジンの脱水素化/水素化触媒系の構築、について検討した。 そこで、脱水素化反応が定量的に進行した上記の中性錯体を用いて2,6-ジメチル-1,5-ナフチリジンの触媒的水素化反応を行った。その結果、補助配位子Lがピリジンである錯体を用いることにより、水素圧70気圧、反応温度130℃、反応時間20時間で、水素化生成物である2,6-ジメチルデカヒドロ-1,5-ナフチリジンが収率92%で生成することを見いだした。以上の結果から、高い水素含有率(6%)を有する含窒素複素環の脱水素化/水素化触媒系の構築が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度において、ビピリンジン系機能性配位子を有するイリジウム錯体の創製と、それを用いて含窒素複素環である2,6-ジメチルデカヒドロ-1,5-ナフチリジン/2,6一ジメチル-1,5-ナフチリジン系の効率的な脱水素化/水素化反応に成功した。本触媒系は、6%以上の水素含有率の有機ヒドリド分子を用い、均一系金属錯体触媒を活用して温和な条件下(140℃以下)で効率的な脱水素化/水素化反応を達成した最初の例である。
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Strategy for Future Research Activity |
同一の均一系錯体触媒を用いて、高い水素含有率(6%以上)を有する2,6-ジメチルデカヒドロ-1,5-ナフチリジン/2,6-ジメチル-1,5-ナフチリジン系の脱水素化/水素化反応に成功した。今後は水素化反応においては収率が定量的に進行する触媒系を開発して、さらに可逆的に脱水素化/水素化反応を達成することを目指す。また、水素化反応における真の触媒活性種の探求と反応機構の解明が課題となる。
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