2011 Fiscal Year Annual Research Report
水中で機能するリサイクル可能な有機還元剤の設計とその利用
Project/Area Number |
22550102
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
黒星 学 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (30242316)
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Keywords | 有機還元剤 / ビオロゲン / 有機電解還元 / パラジウム触媒 / ホモカップリング / ビアリール / 2,2'-ビピリジニウム誘導体 |
Research Abstract |
本研究では,4,4'-ビピリジニウム誘導体を水中で電解還元して有機還元剤を発生し,遷移金属触媒との組み合わせにより炭素-炭素結合形成を行っている。今年度は(1)4,4'-ビピリジニウム誘導体(ビオロゲン類縁体)の触媒化と(2)4,4'-ビピリジル以外の骨格を有する有機還元剤前駆体の合成・評価・利用を検討した。 (1)電解還元を利用して,ビオロゲンから有機還元剤を反応系中で発生させ,それをパラジウム触媒を用いるハロゲン化アリールのホモカップリングによるビアリールの合成に適用することにより,触媒量のビオロゲンを用いる反応系を開発した。少量の反応剤を用いるだけで反応が進行するので,反応系が均一となり単純化され,系が複雑になることを防止できた。また,環境負荷の軽減を図ることができた。 (2)2,2'-ビピリジルを出発原料として,これを1,2-エタンジオール由来のトリフラートで処理することにより,2,2'-ビピリジニウム誘導体を合成した。この電気化学的特性を測定することにより,4,4'-ビピリジニウム誘導体と同様の酸化還元挙動を取ることを明らかにした。また,実際に2,2'-ビピリジニウム誘導体を電解還元して有機還元剤を調製し,パラジウム触媒を用いるハロゲン化アリールのホモカップリングが進行することを見つけた。従来の4,4'-ビピリジニウム骨格だけでなく,有機還元剤前駆体の基本骨格のバリエーションが広がることによって,より安定で電子移動の効率の高い母核を設計する指針が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビオロゲン誘導体にポリエチレングリコール基を導入することにより,水中でのホモカップリング反応が進行することを見つけた。また,電子求引基・供与基を導入することにより,酸化還元電位を制御できることを見つけた。今後は「触媒化」「回収/再利用」というキーワードをもとに,より実用化に向けた還元剤前駆体の開発を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)回収・再利用が容易なビオロゲン誘導体の開発。ビオロゲンに「水に可溶化する親水性のパーツ」と「基質と相互作用して可溶化する脂溶性のパーツ」の双方を導入し,水中での反応を促進する還元剤の開発を行う。 (2)安定で触媒化できる有機還元剤前駆体の開発。ビオロゲンを還元して有機還元剤を調製できるが,反応剤自体の二量化などの副反応が起き,触媒化の効率は必ずしも高くない。また,電解中では還元剤前駆体の電解還元だけでなく基質の電解還元が並行して起こるので,副反応が惹起される。有機還元体の骨格を精査し,より効率よく電子移動が起こり,繰り返し利用できる有機還元剤前駆体を開発する。
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Research Products
(1 results)