2011 Fiscal Year Annual Research Report
新低原子価チタン反応剤による炭素ー酸素,窒素ー硫黄結合解裂反応の開発と合成利用
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22550103
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
岡本 専太郎 神奈川大学, 工学部, 教授 (00201989)
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Keywords | 有機化学 / 有機合成化学 / 低原子価チタン反応剤 / 結合解裂 / 脱保護法 / スルホンアミド / エポキシド / ラジカル反応 |
Research Abstract |
1.エポキシドC-O結合のラジカル解裂反応 エポキシド類は,通常求核剤との反応では立体障害を避けてより置換基の少ない側の炭素上で開環(C-O結合解裂)が進行する。求核性還元剤との反応もこの形式に従うので,反応はより高級なアルコールを与える。本研究で見いだした新しい低原子価チタン反応剤Ti(O-i-Pr)_4/Me_3SiCl/Mgは,室温付近の温和な条件下で,エポキシドと反応し,より置換基の多い炭素上でのC-O結合解裂を選択的に進行させることができる。 反応は,低原子価チタンからの一電子移動を伴うラジカル的な反応であり,しかも,中間で生成する炭素ラジカル(βチタノキシラジカル)に対するラジカル水素源として,チタン反応剤上のi-PrO基の三級炭素上水素が使われていることを明らかにした。このことを利用することで,環状炭化水素上のエポキシドが立体選択的に多置換側で還元できる手法を開発した。 この研究成果は,Chemical Communicationsに速報として報告した。 2.オキセタンC-O結合のラジカル解裂反応 四員環化合物であるオキセタンは,エポキシドより1段階,あるいはカルボニル化合物からone-pot2段階反応で容易に合成できる。このオキセタン類のC-O結合解裂が多置換側で行えれば,一炭素あるいは二炭素の増炭反応として合成的に結うようである。しかし,これまでオキセタンの多置換側での還元解裂反応はごく限られてきた。知られている三価チタン種Cp_2TiClは,オキセタンを有効に解裂することができない。本研究で用いた新しい低原子価チタン反応剤Ti(O-i-Pr)4/Me3SiCl/Mgは,室温付近の温和な条件下で,種々のオキセタン類を多置換側で効率よく還元できることを見いだした。 この成果は,さらなる合成的な展開を含む研究として展開中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に計画した,(1)エポキシドー選択的還元,(2)立体選択的還元,(3)スルホンアミドの還元と脱保護法としての確立,(4)エン-エポキシドのラジカル環化反応のうち,(1)~(3)をほぼ達成し,いずれも,合成手法として確立し,報告した。さらに,計画していなかった成果として,オキセタンの一選択的ラジカル還元法を見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の途上で見いだした,上述の"オキセタンのラジカル還元法"に加え,"アミノ基の保護基であるアリルオキシカルボニル(alloc)基の新しい脱保護法"を開発しつつ有る。これらと,研究計画で上げた"エン-エポキシド類のラジカル環化反応"について,合成手法と成りうるレベルの反応として確立をめざす。
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Research Products
(3 results)