2011 Fiscal Year Annual Research Report
配位不飽和二核ニッケル錯体を鍵とする協奏触媒開発と汎用性触媒系の開拓
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22550104
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
松原 公紀 福岡大学, 理学部, 准教授 (00294984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古賀 祐二 福岡大学, 理学部, 助教 (60373148)
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Keywords | ニッケル1価錯体 / 協奏的触媒作用 / 2核錯体 / Kumadaクロスカップリング / Buchwald-Hartwigアミン化 / 反応機構解明 / ハロゲン化アリール |
Research Abstract |
平成23年度は、22年度の研究成果を受け、以下に示す2つの研究方針について、さらに詳細な研究を進めることができた。すなわち、(1)ニッケル1価2核錯体を経由するKumada-Tamao-Corriuクロスカップリングにおける反応機構の解明、(2)汎用触媒系の開拓のためのニッケル1価錯体を用いた触媒系および触媒反応開発、である。 (1)22年度は、ニッケル1価2核σ-アリール錯体とハロゲン化アリールとの反応における速度論解析を行い、酸化的付加や還元脱離ではなく、ハロゲン化アリールの配位が律速段階であることがわかった。 さらに予備的なDFT計算の結果、2核構造を保ったままでハロゲン化アリールの酸化的付加、ニッケル2価2核錯体の生成、還元的脱離によるニッケル1価錯体の生成が予測される結果を得ることができた。 この2核錯体からは、酸化的付加とトランスメタル化のどちらのプロセスも理論的に可能であるため、錯体とハロゲン化アリールとGrignard試薬との当量反応混合物から生成物であるビアリール類の構造を明らかにした。その結果、ハロゲン化アリールのハロゲンが臭素の場合、酸化的付加反応が優先し、より高速なプロセスが可能であること、塩素の場合、Grignard試薬とのトランスメタル化も併発し、反応速度はより遅くなることを明らかにした。今後は、XAFS測定による溶液中活性種の構造決定を検討したい。 (2)22年度までに、ニッケル1価錯体を用いたハロゲン化アリールとジアリールアミン類との反応によるトリアリールアミンとの反応が進行することを見出していた。23年度は、この反応の最も効率的なプロセスおよびいくつかの基質検討を行った。その結果、トリフェニルポスフィンを加えてニッケル1価単核錯体を前駆体とする触媒系が最も効率よいことが分かった。おそらく2核錯体のみのプロセスでは、触媒の失活がある頻度で進行するものと考えている。また、通常高い反応温度を必要とするトリアリールアミン合成については、室温下という非常に穏やかな条件でのいくつかのアミン類の合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が23年9月まで1年間在外研究のために当該研究の従事(XAFS測定など)に支障があったこと、研究協力者である大学院生が精神的な疾患により療養を余儀なくされたことが若干の遅延の原因である。 しかしながら、当初の目的である反応機構解明の糸口は得ているうえ、24年度の反応展開、および触媒系の確立の計画にはある程度沿っているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)溶液中のXAFS測定を24年度前期に予定している。これにより真の活性種となる化学種の捕捉を試みる。 (2)種々の安定化配位子を有するニッケル1価錯体ライブラリの構築、それらの中から効率的な触媒反応を行えるシステムを見出す。 (3)新たな触媒的クロスカップリング反応の開拓。今年度はアリールヘテロクムレン類の新規合成プロセスの開拓、ニッケル1価錯体触媒系では初めての例となる、Sonogashira反応、α-アリール化反応の検討、などをめざす。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Synthesis, Structure, Ligand Dynamics, and Catalytic Activity of Cationic [Pd(η^3-allyl)(κ^2(E,N)-EN-chelate)]^+(E=P, O, S, Se) Complexes2011
Author(s)
Bernhard Bichler, Luis F.Veiros, Ozgur Oztopcu, Michael Puchberger, Kurt Mereiter, Kouki Matsubara, Karl A.Kirchner
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Journal Title
Organometallics
Volume: 30
Pages: 5928-5942
DOI
Peer Reviewed
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