2011 Fiscal Year Annual Research Report
アミノ酸配列特異的糖鎖導入と酵素法による糖蛋白質の精密ハイブリッド合成
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22550105
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 厚志 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (90361138)
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Keywords | アマドリ転位反応 / 糖タンパク質合成 / 酵素的糖転移反応 / 活性化糖 / 糖オキサゾリン / 受容体特異性 / N-結合型糖鎖 / 無保護糖活性化 |
Research Abstract |
本研究提案においては、これまでの若手研究(B)の研究成果及び前年度までの研究成果を踏まえ、より高度かつ精密な糖蛋白質合成の確立を目指す。そして、新規糖蛋白質の機能特性評価を行い、新規材料への道筋を立てる。これらを達成するために、以下の検討項目について重点的に研究を推進し、以下の結果を得た。 1.アマドリ転位反応を高選択的に進行するオリゴ糖の合成及びアミンとの反応性 アマドリ転位反応は、一般に制御が困難である。それは、アマドリ転位産物は比較的安定であるものの、酸化反応もしくはレトロアルドール反応により開裂するどいう副反応が多く存在するからである。これは、連続するヒドロキシ基の存在が原因であると考え、副反応を制御しうる構造のデザインを行い,化学合成を試みた。今年度は3-デオキシマルトースの大量合成及び、2-フェネチルアミンとの反応性について検討したところ、3-デオキシマルトースは反応性が高く、同時に分解反応も高効率で起きた。また、水への溶解度が10mM程度と、類縁2糖と比較して非常に低くかった。以上を総合すると、マルトースに関しては3位をヒドロキシ以外の官能基で置換することが望ましいとの判断に至った。 2.糖活性化技術を活用したアマドリ化した各種蛋白質への糖鎖導入条件の検討 これまでに数々の活性化糖の合成を達成してきたが、酵素との相性についての検討は不十分であった。適応可能な分子に関しての基礎データを得るために、5糖以上、もしくは、分岐を有するオリゴ糖の活性化条件を検討することと、活性化糖を用いた酵素反応の詳細を調べ、糖化蛋白質への配糖化のための基礎データの取得を行った。結果として、N-結合型糖鎖やムチン型糖鎖等、効率的な活性化及び単離条件を確立し、酵素反応による糖タンパク質合成の高効率化への目処が立ったことから、次年度以降の研究の効率的な進行が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アマドリ転位反応の選択性を高める糖鎖を見いだすには至っていないものの、糖の反応性に関する情報が多く得られており、蛋白質に導入すべき分子の合理的なデザインが容易になってきている。とりわけ、3位の置換基の有無は、糖がヘミアセタール体になるかアルデヒド体になるかを左右する重要な因子であることが明らかに成り、他の配糖化技術の基礎的知見として非常に有用である。 糖活性化技術の向上に伴い、様々なオリゴ糖の導入が現実的になってきた。現在はN-結合型糖鎖をデモンストレーション的に行っているが、他の活性化オリゴ糖のレパートリーも格段に増えたことから、任意の機能性糖鎖のタンパク質や他の高分子への酵素的導入の汎用化が見込まれる。 別の研究により、非天然型オリゴ糖鎖の合成も容易になり、酵素への認識性が高く、かつ、アマドリ転位反応を効率的に起こす分子の合成も視野に入り始めた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果より、糖の3位と4位が重要であることは明白である。4位に関してはこれまで通り置換基として糖を導入したものを用い、次年度以降に於いては、3位を様々な置換基にする事により、その反応性について検討する。併せて、活性化糖合成プロセスの効率化の進展に伴い、付与する糖鎖部位の基質認識について検討し、より効率的な配糖化反応を確立する。 現状に於いて想定される問題点として、(1)合理的な糖鎖分子のデザイン及びその数を増やすことが困難(2)活性化に必要な試薬による酵素タンパク質の変性失活、の2点があげられる。その対策に関しても十分な研究項目になることから、(1)に関しては、アマドリ転位の効率が良い入手が容易な2~3糖から成るオリゴ糖をスクリーニングし、(2)に関しては、試薬の簡便な除去法及び酵素活性が維持可能な条件検討を行い、より高効率な糖タンパク質合成系の確立を目指す。
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[Journal Article] Crystal Structures of Glycoside Hydrolase Family 51 alpha-L-Ara binofuranosidase from Thermotoga maritima2012
Author(s)
Im, D.H., Kimura, K., Hayasaka, F., Tanaka, T., Noguchi, M., Kobayashi, A., Shoda, S., Miyazaki, K., Wakagi, T., Fushinobu, S.
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Journal Title
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
Volume: 76
Pages: 423-428
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Direct Dehydrative Pyridylthio-Glycosidation of Unprotected Sugars in Aqueous Media Using 2-Chloro-1,3-dimethylimidazolinium Chloride as a Condensing Agent2011
Author(s)
Yoshida, N., Noguchi, M., Tanaka, T., Matsumoto, T., Aida, N., Ishihara, M., Kobayashi, A., Shoda, S.-i.
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Journal Title
Chemistry-An Asian Journal
Volume: 6
Pages: 1876-1885
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] p-Nitrophenyl β-Glycosides of β-1,4-Gluco/xylo-disaccharides for the Characterization of Subsites in Endo-xylanases2011
Author(s)
Nishimoto, M., Kobayashi, A., Honda, Y., Kitaoka, M., Hayashi, K.
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Journal Title
Journal of Applied Glycoscience
Volume: 58
Pages: 115-118
DOI
Peer Reviewed
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