2012 Fiscal Year Annual Research Report
アミノ酸配列特異的糖鎖導入と酵素法による糖蛋白質の精密ハイブリッド合成
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22550105
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 厚志 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90361138)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アマドリ転位反応 / 糖タンパク質 / 化学-酵素法 / 糖オキサゾリン / リゾチーム / 基質エンジニアリング / 加水分解酵素 |
Research Abstract |
平成24年度は以下の二点について検討を行い、研究の進捗に重要な知見が得られた。 1.糖化タンパク質の効率的分離法の開発 これまでは、アマドリ転位反応によるタンパク質への糖化反応においては、導入位置などに関する情報は皆無であった。当該年度において、非糖化タンパク質の除去を目指してクロマトグラフィー分離を行っていたところ、イオン交換カラムの使用により複数の分画に分離することが出来た。個々の分画をMALDI-TOF MS解析を行ったところ、糖化度に応じて分離されていることが明らかになり、個々の糖化タンパク質の特性解析をする事が可能になった。また、これら個々の糖化タンパク質に対してペプチドマッピングのためのプロテアーゼ消化条件検討を行い、糖化されたアミノ酸の位置の特定に向けた知見を取得した。さらに、収率は50%程度と見積もられた。 2.糖化タンパク質への酵素的配糖化条件の検討 糖化タンパク質への配糖化は、N-結合型糖鎖を脱水縮合剤処理することにより活性化糖である糖オキサゾリン誘導体へと変換し、高活性変異体であるendo-β-acetylglucosaminidase N175Q変異体(Endo-MーN175Q)を用いて行った。生成物の解析はHPLC,MALDI-TOF MS,ゲル電気泳動を用いて行い、所望の糖タンパク質の生成を確認した。収率はおおよそ50%程度と見積もられ、研究初期では測定できない程度の収率から飛躍的に向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アマドリ転位反応および酵素的配糖化反応により、所望の化合物を20-30%程度の収率で得られることが分かり、収率の面ではおおむね目標を達成したと言える。一方、そのプロセスの速度の向上を目指していたものの。アマドリ転位反応の促進因子を見いだすことは出来ず、未だ2週間程度の期間がかかるという点では,以前検討の余地が残されていると判断せざるを得ない。しかしその一方で、分離困難とされていた糖化タンパク質の分離条件を見いだすに至ったことから、糖化タンパク質の特性の詳細な解析に向けたアプローチが可能になり、展開方向が広がったと言える。また、導入位置の解析が可能になったとも言え、今後、導入位置の決定に伴い、位置選択性を促進するアミノ酸配列情報に関する知見が多く得られることが期待できる。 以上、若干の研究方針の変更はあったものの、当初の計画に対しておおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは困難であった置換度の異なる糖化タンパク質の分離法が確立したことより、今後は、分離した置換度の異なる糖タンパク質の特性解析を中心に執り行いながら、アマドリ転位反応の効率化条件の検討を、低分子では無く、高分子であるタンパク質を用いながら行うこととした。以下、簡単に記す。 1.糖化タンパク質の特性解析 HPLCによって分離した糖化タンパク質、並びに糖タンパク質の特性解析を行う。特に、タンパク質としてニワトリ卵白リゾチームを用い、その加水分解活性、糖転移活性、温度安定性、等の特性解析を行う。 2.糖化部位の詳細な検討 糖化タンパク質のペプチドマッピングを行う。分離した糖化タンパク質の糖化部位の同定のみならず、これまで明らかにする事ができなかった部位毎の糖化率を算出する。そのデータを元に、アマドリ転位反応が選択的に進行するアミノ酸配列の決定を行う。 3.糖化反応の促進条件の検討 糖化反応おいてこれまで律速反応であったアマドリ転位反応の高速化に挑戦する。副反応のみならず、酵素活性の維持も併せて評価することにより、より詳細なデータを収集する。
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