2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22550127
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
枝元 一之 立教大学, 理学部, 教授 (80185123)
|
Keywords | 表面・界面物性 / 超薄膜 / 化学物理 / MBE、エピタキシャル |
Research Abstract |
TiOは高融点、高硬度でかつ金属的伝導性を持つことが予想され、物性的に興味深い物質である。しかし、容易にTiO_2まで酸化されるため大気圧下では合成が難しく、特に単結晶はこれまで得られていない。したがって、電子状態や物性の詳細については未知の状態にある。本研究は、TiOと格子の整合性がよく、かつTiOの結晶化のために必要な高温処理が可能なMo(100)基板上にエピタキシャル的に薄膜を積み上げることにより、TiOの単結晶薄膜の合成を目指したものである。 超高真空下でMo(100)にTiを蒸着し、さらにこれを12 Lの酸素と反応させることにより、下地Moの酸化を抑えてTi酸化物薄膜を合成することに成功した。この薄膜を真空中で加熱すると、1000℃までは薄膜はTi_2O_3の状態にあり、1100℃以上に加熱するとこれがTiOに転移することを見出した。薄膜の価電子状態を測定するため、下地Moの4dバンドの光イオン化断面積が狭小となる条件(クーパー極小、励起エネルギー100eV)で下地のエミッションを抑えて光電子スペクトルを測定した。加熱温度が1100℃以上では、Ti3dの占有の増加に伴いフェルミ準位近傍のバンド強度が増大し、かつてAg(100)上に作成したTiO薄膜と同様のスペクトルとなることを確認した。TiO薄膜に覆われたMo(100)面は、表面調整条件に応じて様々な低速電子回折(LEED)像を示す。その中で、1300℃で加熱した際得られる(2×2)LEEDパターンを示す表面について角度分解光電子分光(ARPES)により二次元電子状態の測定を行った。意外にも、LEEDは(2×2)パターンを示すにもかかわらずTiOの電子準位は(1×1)の周期性を示した。Tiを蒸着せず、酸素12L吸着したMo(100)を1300℃に加熱しても(2×2)パターンが得られることから、Mo(100)には(1×1)周期で整合したTiO薄膜で覆われた領域と(2×2)酸素吸着面の領域が共存しているモデルを提案した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Mo(100)上にTiO単結晶薄膜を合成することには、成功した。しかし、得られた薄膜は、我々のモデルによればMo(100)上で(2×2)酸素吸着層と共存し、純粋な単結晶薄膜は得られていない。VO酸化物薄膜の合成は、現在試行錯誤により条件の検討中である。気体吸着実験は、純粋な単結晶薄膜が得られていないためまだ行っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
Mo(100)上に蒸着するTi量を変化させ、この酸化・加熱によりTiO薄膜を作成し、純粋なTio薄膜が作成される条件を探査する。純粋な薄膜の形成は、(2×2)酸素吸着層の消失を持って判断する予定である。得られた薄膜においてCO,H_2,C_2H_2,H_2S,CH_3SH分子の吸着実験を行い、TiO薄膜において予想される触媒活性の検証を行う。 Mo(100)上にVを蒸着し、これを酸化・加熱することにより、VO単結晶薄膜を合成する。これについて光電子分光実験を行い、その電子状態を解明する。
|
Research Products
(3 results)