2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22550130
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Research Institution | Tokyo University of Science, Yamaguchi |
Principal Investigator |
井口 眞 山口東京理科大学, 工学部, 准教授 (80291821)
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Keywords | ずれ応力 / 剪断歪み / フォトクロミズム / ラマンスペクトル / 高圧 / スピロピラン / ジアリールエテン / 赤外スペクトル |
Research Abstract |
フォトクロミック結晶に対するずれ応力と光照射の複合的な効果を色の観察と分光測定から調べた。 ・ジアリールエテンの応力効果:フッ素系PFCPの開環体(白色)は、ずれ応力による明瞭な色の変化を示さないが、ラマンスペクトルは全体が5~20cm^<-1>高波数に移動し、バンドa(1635cm^<-1>)は消失した。この変化は応力を抜くと元に戻った。バンドaは基準振動解析から開環体のフッ化5員環のC=C伸縮振動と帰属された。一方、紫外光を照射した閉環体(青色)は、ずれ応力によって緑色に変化し、応力を抜くと青色に可逆的に戻った。光照射:ずれ応力下の開環体(白色)に可視光を照射すると緑色へ変化し、応力を抜くと青色になり、青色は可視光によって退色した。常圧下の赤外スペクトルにはバンドaと同じ1635cm^<-1>にC=Cの吸収が観測されるが、ずれ応力下の光照射によって生成した緑色では幅広く顕著な変化が見られた。この変化は、ずれ応力がC=Cを含むジアリールエテンの異性化によって開裂・閉環する6員環に強く作用し、さらに可視光が化学結合の変化を伴う色変化を誘起することを示している。この結果は、応力によってフォトクロミズムの波長を調節できることを示しており、ずれ応力と光による化学結合の制御につながる重要な知見である。応力下の緑色の試料には、ラマンスペクトルの励起光によって強い蛍光を発する分子種が含まれ、その分子構造を解明するために赤外スペクトルを測定している。シアノ系CMTEにおいてもPFCPと同様の応力と光によるクロミズムが観察された。 ・スピロピラン:メトキシベンゾスピロピラン(methoxySP)の白色薄膜は、ずれ応力によって緑色に変化し、ラマンスペクトルには強い蛍光が見られるが、応力を抜くと白色になり、スペクトルはほぼ元の形状に戻った。nitroSPも応力下では緑色と蛍光を示すが、応力後はmerocyanime(紫色)に異性化し、methoxySPとはずれ応力効果が異なることがわかった。 ・他に、スピロオキサジンとロフィンの実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的であるずれ応力と光の複合的な作用による化学結合の制御については、ジアリールエテンのフォトクロミズムの波長が応力によって変化することを見出しており、おおむね順調である。今後、その機構および、応力と波長の関係を解明していく。その際、スピロピランとジアリールエテンの応力下で観察される緑色と蛍光を示す分子種の解明が必要であるが、赤外分光法を利用した実験方法の検討と測定を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
ずれ応力と光を複合的に用いたクロミズム現象とそれを用いた化学結合の制御手法の創成を目的として、フォトクロミズムの誘起波長と応力の関係を詳細に調べると共に、ずれ応力によって生成する分子種の同定と機構の解明を行う。測定には、主に顕微ラマン分光器を用いるが、蛍光を発する試料には赤外分光器を改良しながら利用する。また、蛍光の分光測定を行う。研究対象は、スピロピラン、ジアリールエテンを中心に、構造色を示すアゾベンゼン類、前年度応力実験を行ったスピロオキサジン、ロフィンとする。
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Research Products
(6 results)