2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22550133
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
永田 央 分子科学研究所, 分子スケールナノサイエンスセンター, 准教授 (40231485)
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Keywords | 分子機能 / 動的制御 / 時系列 / 外部刺激 |
Research Abstract |
(1)両端にフリーベースポルフィリン・亜鉛ポルフィリンを結合したピンセット型分子について、両端に正負の電荷を導入したものの合成に成功した。この分子はジクロロメタンなどの低極性の溶媒には極めて難溶であるが、一当量の酸を添加することで溶解度が大きく増大した。この挙動は、酸添加前は分子間で正負の電荷を向かい合わせるような形で凝集しており、酸添加によってその凝集が解けたものと解釈することができる。また、中性状態でもジクロロメタンにTHF、アルコールなどの高極性溶媒を添加すると溶解度が高くなり、クーロン力による凝集が弱められたためと考えられる。 (2)ピンセットの根元部分の接合部について、トリメチレン・シクロヘキサン-trans-ジイル・キサンテン-1,8-ジイル架橋を用いた3種類の分子を合成し、亜鉛ポルフィリンからフリーベースポルフィリンへの分子内エネルギー移動について調べた。エネルギー移動の効率はキサンテン>トリメチレン>シクロヘキサンの順となり、2つのポルフィリン間の平均距離を反映した結果となった。また、接合部が可動と考えられるトリメチレン架橋体について、両端に電荷を導入する前後のエネルギー移動効率を比較したが、有意な差は見られなかった。これらの分子について計算機シミュレーションを行ったところ、予想に反してトリメチレン架橋の化合物では2つのポルフィリンが対面型に近づく確率が少ないことが示唆された。 (3)接合部の運動性をさらに確保するため、3-オキサペンタン-1,5-ジイル、3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジイル架橋を用いた分子の合成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、異なる接合部を用いたピンセット型分子のエネルギー移動を比較することで、分子の形を評価することができ、また接合部の構造と分子の形の相関についても実験・シミュレーションの両方から一貫性ある結果が得られた。動的挙動の制御には未だ至っていないが、その実現に必要な知見は着実に蓄積できている。
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Strategy for Future Research Activity |
運動性を十分に確保した接合部を持つ分子を合成し、両端への電荷導入前後での溶液内構造の変化について調べる。また、これらの分子について、外部刺激による動的挙動の制御を行う。外部刺激としては透明電極を介した電圧の印加を用いる。測定媒体として何を使うかが問題であるが、今年度の成果に基づいて、高沸点の塩素系溶媒とグリセリンもしくはポリエチレングリコールの混合物が利用できると考えている。
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