2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22550137
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
吉田 勝 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 研究グループ長 (40344147)
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Keywords | ゲル / レオロジー / 電解質 / X線結晶構造解析 / 自己修復 / カーボンナノチューブ / 光反応 / イオン液体 |
Research Abstract |
当該年度は、モデル化合物の合成とその物性評価、並びに新しいゲル化剤誘導体の合成と機能発現に取り組んだ。その結果、まず電解質ゲル化剤の基本骨格となるモデル化合物のX線結晶構造解析に於いて、理論計算で既に予測されていたN-H...Cl間のアミドーアニオン相互作用が明瞭に観測され、仮説を裏付ける結果が得られた。他方、結晶中で観測されたH...Cl間の分子間距離は2.44Aと、理論計算で予想された値(2.07A)と比べて、約18%程度の伸長が見られたが、これは計算上の誤差ではなく、理論計算が電解質1分子のみを扱っているのに対し、結晶中では、+と-の電荷バランスが、近接する複数の分子間で平均的に分散されていることを反映しているためと考えられる。他方、これらの化合物は高濃度条件化に於いてもゲル化を示さず、他の物性測定からも、溶液中での有効な会合が見られないという結果が得られ、ゲル化特性発現のためには、電解質の基本構造が多重連結していることの重要性が示された。なお、モデル化合物の一部には、カーボンナノチューブ分散能が見出され、これに関連した光反応性部位を持つ誘導体に関する論文発表を行った。一方、新しいゲル化剤誘導体に関しては、従来の芳香環に代えて、脂肪族であるシクロヘキサン環を有する誘導体を合成した後、適当なイオン交換反応を行ったところ、各種のイオン液体類にのみ特異的にゲル化剤として働く新しい誘導体の調製に成功した。この化合物は、従来例に比較して低濃度でゲル化が可能であり、また極めて透明性の高いイオン液体ゲルが得られるのが特徴である。また、芳香環の誘導体に比べて、電気的酸化に耐性があることや、広い温度範囲で固有のイオン電導率が殆ど低下しないことも、各種の電気化学的測定から明らかとなった。この結果に関連して、特許出願を行った。
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