2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22550137
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
吉田 勝 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 研究グループ長 (40344147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長沢 順一 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (60357621)
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Keywords | ゲル / ゲル化剤 / 電解質 / イオン液体 / レオロジー / イオン電導度 |
Research Abstract |
当該年度も、モデル化合物の物性評価、並びに従来とは異なる骨格の新しいゲル化剤誘導体の合成と機能発現に取り組んだ。その結果、モデル化合物の一部には、水中で極めて良好な単層カーボンナノチューブ(SWCNT)分散能が見出され、UV-vis-NIRや、2次元蛍光測定によって孤立分散状態が分光学的に確認された。この結果を受けて、光反応性部位を持つ誘導体を用いた光刺激を駆動力とするSWCNT分散制御に関して、査読付き国際論文誌に論文発表を行い、プレス発表やイベント出展などの成果発信にも精力的に取り組んだ。一方、電解質ゲル化剤となる有機電解質の新たな骨格として、従来のアミド部位の芳香環に代えて、脂肪族であるシクロヘキサン環をモノマー中央部に有する誘導体を合成した後、適当なイオン交換反応を行った。その結果、一般的な極性有機溶媒においては顕著なゲル化能が見られなかったものの、各種のイオン液体類には特異的にゲル化剤として働く新しい誘導体の調製に成功した。ゲル化に成功したイオン液体は、現時点で10種類以上に上っている。特に、TFSAおよびFSAと呼ばれるフッ素系のアミドアニオンをカウンターアニオンに持つ各種イオン液体においては、従来よりも重量濃度において一桁程度良好なゲル化能が観測され、その最低ゲル化濃度は、カチオンとアニオンの組み合わせを最適化した条件において、0.1%以下であることが判明した。また、新たに行った電気化学的イオン電導度測定からも、広い温度範囲で、その固有の電導度がゲル化後も9割以上保持されていることが明らかとなった。また、従来の電解質ゲル化剤の系に関して、カナダ国立ナノテクノロジー研究所の理論計算グループとの国際共同研究の成果として、アニオンや溶媒水の介在した架橋構造によるゲルネットワーク生成を示唆する結果を得て、査読付き国際論文誌に論文発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な手法で、ゲル化の機構が徐々に明らかになりつつあると共に、新たな誘導体を得てこれまでよりも高性能のゲル化剤となる材料を、イオン液体の例について見出している。したがって、研究の目的である「有機電解質におけるゲル化機構の解明と高機能材料化」については、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は、これまで得られた知見を基に、更なる機構解明とゲル化剤の高機能化を目指す。具体的には、ゲル化剤骨格の架橋部の長さを系統的に変えて、その脂溶性の変化がゲル化の機構およびゲル化能に与える効果を見積もる。また、イオン液体ゲルについて、濃度を変えながらレオロジー測定を行うことにより、ヒドロゲル等に比べて圧倒的に知見の少ない、イオン液体ゲルの動的粘弾性に与えるゲル化剤の構造の効果や、せん断歪による崩壊後の擬液体状態から擬固体状態への自己修復能について詳細に検討する。これらの結果より、ゲル化機構における静電相互作用や、カチオン、およびアニオンの種類と組み合わせの重要性に関する新たな知見を得る。
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Research Products
(12 results)