2011 Fiscal Year Annual Research Report
フッ素基有する医薬品の超高度酸化法による無害化に関する研究
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22550141
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
日高 久夫 明星大学, 理工学部, 教授 (70062312)
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Keywords | 脱フッ素反応 / 高度酸化技術 / 半導体光触媒 / 光還元触媒 / 医薬品分解 / 水質汚染防止 / 酸化ガリウム / 変異原性試験 |
Research Abstract |
向精神薬や抗うつ病薬などのフッ素含有医薬品(例えばフルオキセチンやフルボキサミンマレイン酸など)は、一般に広く服用されている。医薬品の構造としてはCF_3基またはF基を有するヘテロ環状化合物であり、服用した後、下水道に排出される。バクテリアを含む動物に対して、量的に微量であっても内分泌かく乱物質として作用するので、深刻な医薬品汚染(Drug Pollution)を引き起こしている。従来の光触媒法または活性汚泥法では強いC-F結合を含む医薬品は分解されない。そのため高度酸化プロセスの一つである、オゾン併用O_3/TiO_2/UV、O_3/H_2O_2/TiO_2/UV(ハイブリッド法)、さらに強力な酸化剤添加(KClO_4,KMnO_4)などによる迅速な酸化分解を行った。しかし、高度酸化プロセスでは、脱フッ素反応によるフッ素イオンの生成収率は低かった。 そのため新規な光触媒であるβ-酸化ガリウム(β-Ca_2O_3)を用いて光還元反応分解を試みた。実験方法としては、光分解装置は石英セル中でβ-酸化ガリウムを用いて低圧水銀灯(殺菌灯)照射下で、窒素雰囲気中で光還元分解を行った。種々の触媒について比較検討した結果、β-酸化ガリウムが高活性の触媒であることが確認された。医薬品および代謝物質の生態への影響に関して、毒性や微生物の薬剤耐性化は全く解明されていない。そのため光分解プロセス中で生成した中間体の毒性や発ガン性を調べた。その結果、サルモネラ菌によるAMES試験により変異原性は無いことが確認された。脂溶性で水に溶解しない難分解性のフッ素含有医薬品を効率良く、分解処理することに成功した。またフッ素含有モデル化合物の触媒表面への吸着因子を考慮し、無機有機概念図(IOB)を用いてフッ素含有有機化合物化学構造と脱フッ素反応の収率との関係を解明中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C-F結合を有する医薬品およびそのモデル化合物の脱フッ素反応を高収率で達成に成功した。二酸化チタン/オゾン/酸素/紫外線によるハイブリッド法より、窒素ガス雰囲気中で、新規な光触媒の酸化ガリウムによる光還元反応により、脱フッ素が容易に進行したが、複素環芳香族の部位は部分的な開環しか起こらなかった。しかし従来の二酸化チタンによる光酸化分解法では出来なかったことが、この光還元法により、複雑な有機フッ素化合物の無機化および無害化が出来たことの意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)光分解生成物の水質環境に対するリスクを評価することば、光触媒分解による難分解性処理の確立に役立つだろう。Amesテストは有機フッ素化合物の分解中間生成物に対する発がん性や毒性の指標である、サルモネラ菌を用い変異原性について更に調べる。 (2)難分解性化合物の高濃度および大量処理のためのパイロット光分解大型装置の試作および化学工学的立場から、最適条件を検討する。 (3)多種多様の脂溶性および水溶性のフッ素含有化合物の化学構造に対する光還元および光酸化のプロセスを、TF-MSの質量分析器および異核種F^<19>-NMRを用い、脱フッ素の分解メカニズムを解明する。 (4)フッ素含有化合物の無機有機概念図(IOB)を計算して、酸化ガリウムの表面吸着性と光触媒活性(分解効率)との関連を調査する。
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Research Products
(6 results)