2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22550146
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 正 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (70092385)
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Keywords | 光合成 / 光化学系 / 酸素発生 / 分光電気化学 / 酸化還元電位 / 光誘起電子移動 |
Research Abstract |
本研究では、光合成機能のうちでブラックボックスにとどまる水分解(酸素発生)の分子メカニズムにつき、重要機能分子である一次電子受容体フェオフィチン(Ph)とプラストキノンQAの酸化還元電位を分光電気化学的計測により実測し、電位相関を解明することで、酸化力の源とされるP680の酸化還元電位の実態に迫り、水分解系の物理化学的特性を明らかにすることを目的としている。 本年度は、強光下で発現する特異的な光化学系II(PSII)をターゲットに研究を展開した。シアノバクテリアの一種T.elongatusのゲノムにはPSII反応中心タンパクD1(PsbA1)をコードする遺伝子が3つあり、これらの発現様式は培養条件によることが知られている。通常ではpsbA1が、強光下ではpsbA3が発現する。PsbA1もしくはPsbA3で構成されるPSIIの性質を調べると、PsbA3-PSIIの方が酸素発生活性が1.7倍ほど高く、また生育速度などが違うことが見出されている。これらの違いは、PsbAを構成する344アミノ酸残基のうちの21個の違いによるとされ、特に活性の差は、Phに近接する残基(D1-130)の違いがもたらすPhの電位差によることを既に申請者は電位計測から明らかにしている。すなわち、PsbA3-PSIIのPhの電位が17mVほど高く、P680の電位が不変ならば、電子供与体・受容体間の自由エネルギー変化がその分大きくなっているといえ、それが活性を高めている要因だとした。しかし、自由エネルギー差を熱発光分析により検討すると、単純にPhの電位変動だけでは説明できないことが分かった。そこでQAの電位計測を行うと想定とは異なり、30mVほどの差異があることを見出した。以上の結果から、Ph・QA間の電子伝達特性と酸素発生活性の相関およびP680の電位との関連性が明らかになった(論文取りまとめ中)。
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Research Products
(12 results)