2011 Fiscal Year Annual Research Report
海洋光合成カロテノイドの超エネルギー伝達効率解明に向けた有機合成からのアプローチ
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22550160
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
勝村 成雄 関西学院大学, 理工学部, 教授 (70047364)
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Keywords | 海洋光合成 / カロテノイド / ピペリジン / フコキサンチン / 超エネルギー伝達効率の解明 / 構造的特徴と機能 / 効率的全合成 / 立体化学制御 |
Research Abstract |
1.昨年度開発した共役鎖長を有するイリデンブテノリドのワンポット合成法を基にして、ペリジニンにおけるイリデンブテノリド環を中央方向へ共役オレフィン一つ分および二つ分移動させた二種の類縁体A,Bの合成を達成した。合成した二種の類縁体A,Bの超時間分解吸収スペクトルを測定したところ、イリデンブテノリド環がほぼ中央に位置する類縁体Bでは、溶媒によらず、S_<ICT>(Intramolecular Charge Transfer State)は観測されなかった。このように、メタノール中でもS_<ICT>が観測されないイリデンブテノリド環を有した化合物は初めてであり、S_<ICT>が観測されるためにはカルボニル基に対して分子が非対称でなければならないことが実証されたと言える。 2.一方、すでに立体化学を制御したフコキサンチンの全合成を達成しているが、この合成法をさらに発展させ、フコキサンチンに存在する7つの共役オレフィンが2つ少ないC35類縁体、1つ少ないC37類縁体、および1つ多いC42類縁体の合成を達成した。特にC42類縁体は、天然物より共役オレフィン数が1つ多いためその安定性が懸念されたが、特に問題はなかった。またC35、C37類縁体合成では、工程数を減らした効率よい合成法を新たに開発することができた。次いで、これらの超時間分解吸収スペクトルを測定した結果、先にペリジニンで得たS_<ICT>の特異な性質を実証する結果を得た。このようにして、これまで全く解明されていなかった新規な励起エネルギー準位であるS_<ICT>の特異な性質を初めて確証することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展している。特にフコキサンチンおよびその類縁体の合成法を確立したことにより、S_<ICT>エネルギー準位の新たな特性の観測に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ペリジニンのイリデンブテノリド官能基が示すユニークな性質の解明を目指し、β-カロテンとの比較対照を意図してβ-カロテンのイリデンブテノリド類縁体の開発とその特性を検討する。 2.ペリジニンにおけるイリデンブテノリド官能基のS_<ICT>エネルギー準位に対する効果を検討するため、共役オレフィンの数が4のC31類縁体の合成を検討する。 3.フコキサンチンにおけるアレン結合のS_<ICT>に及ぼす効果を検討するため、アレンをオレフィンに変えたC32、C40類縁体の合成を検討する。
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Research Products
(25 results)