2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規な含窒素複素環化合物を活用した有機エレクトロニクスの研究
Project/Area Number |
22550162
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
西田 純一 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助教 (70334521)
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Keywords | 半導体物性 / 高効率太陽電池材料・素子 / 有機導体 / 有機化学 / 有機半導体 / 複素環化合物 / 色素増感太陽電池 / 分子集合体 |
Research Abstract |
本研究では、アミン系縮合剤の優れた反応性を利用して新規な含窒素複素環化合物の創出を行っている。窒素原子を含んだπ共役化合物は強い電子供与性または受容性を示し、分極構造に由来した特異な物性及び分子間相互作用を与える。これらの化合物の酸化還元電位測定及び発光特性を含めた基礎溶液物性を検討し、さらに長所を生かした有機デバイスの作製を行っている。素子としてOFETを作成し、これらの固体薄膜状態でのキャリア輸送特性について検討を行っている。具体例として、窒素原子とホウ素原子を含んだジアザボロール環を有する複素環化合物の合成を行い、これらが非常に高い分子平面性と対称性を有することをX線結晶構造解析から明らかにしている。分子はヘリングボーン型に配列し、固体状態で強く青色に発光する。これらの化合物が薄膜状態で比較的に高いホール移動度を与えるp-型の半導体として働くことを初めて見出し、論文として報告した。現在、これらの化合物の発光素子や有機太陽電池への応用を合わせて検討している。一方、C=N二重結合有する含窒素複素環化合物は電子受容性を示すが、これらの複素環を有するドナーアクセプター型の化合物が色素増感太陽電池の色素として高い開放電圧を与えることを報告している。現在有機色素の研究も合わせて行っている。 近年、典型元素を巧みに利用した有機π電子化合物の有機エレクトロニクスへの応用が注目を集めているが、本研究で開発されているπ電子化合物は分子構造や電子構造が新しく、この分野のブレークスルーが発掘される可能性があるために重要で意義があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アミン系縮合剤の優れた反応性を利用して新規な含窒素複素環化合物の創出を行っている。これまでに含窒素複素環に環状カルボニル骨格を組み込んだ縮環型の化合物の合成に成功し、その電界効果トランジスタ(FET)特性の評価を行い、これらが優れた電子移動度を与えることを明らかにした。またX線単結晶構造解析を行い、これらの化合物の中には水素結合のネットワークで非常に整った分子配列を与えるものがあること明らかにした。また含窒素複素環の特徴を利用した梯子型に縮環した化合物の合成と評価を行った。さらに、これらの化合物を活用した色素増感太陽電池の作成にも成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに含窒素複素環と環状カルボニル骨格を組み込んだ縮環型の化合物の合成に成功し、優れた電子移動度を与えることを明らかにした。これらの研究を発展させ、安定性を向上させるために、より電子受容性が高い化合物の開発を行う予定である。梯子型に縮環した化合物の開発検討においては、より縮環の数が多い大きなπ電子化合物の開発を行いたい。色素増感太陽電池の研究においては、色素の電子供与部分や電子受容部分、無機半導体へ吸着させるアンカー部分の分子骨格についてより詳細に検討を行う。
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