2011 Fiscal Year Annual Research Report
マルチスケール光学解析を用いた高効率白色有機EL素子の実践的研究
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22550168
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
三上 明義 金沢工業大学, 工学部, 教授 (70319036)
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Keywords | 有機EL / 発光素子 / 電気・電子材料 / 光物性 / シミュレーション |
Research Abstract |
本研究は光学的視点から有機EL照明に適合した高効率な白色有機ELの開発を目指すものである。今年度は、前年度に開発した燐光緑色有機ELの光学解析技術に関する研究成果に基づき、新規な高屈折率バッファ層およびマルチカソード構造の提案とその解析手法に取り組み、表面プラズモン損失の低減および弱いマイクロキャビティ構造と発光の指向性制御による高効率化を進めた。このため、有機薄膜および基板内の光電磁場モード解析、電気双極子放射と界面との近接場相互作用の定量解析とその実証実験を行った。得られた成果は以下のようである。 (1)波動光学・電磁光学・近接場光学統合ソフトウェアの開発 サブミクロンサイズの積層薄膜の光学計算に適する波動光学、マイクロサイズに適する光線追跡法、ナノサイズ周期構造に適する電磁光学および波長サイズの双極子放射場解析が可能な近接場光学を統合化したマルチスケール解析手法を開発した。また、フレネル計算、時間分解差分法、厳密結合波解析法などの計算理論を導入することで光学計算の高速化・高精度化を図ることができた。 (2)新規な光取り出し構造(マルチカソード構造、高屈折率バッファ層)による発光効率の改善 半透明金属電極と光学補償層を組み合わせた新規なマルチカソード構造を提案し、光学損失の約40%を占めていた表面プラズモン効果を10%以下に低減すると共に、高屈折率バッファ層の導入により、外部放射への転換を強め、光取り出し効率を50%以上に高められることを計算と実験の両面から示した。現在進めている表面周期構造の開発により、光取り出し効率は約70%まで高めまると予測しており、最終年度に向けて、高効率有機EL照明の実現に向けた光学設計技術を開発する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機EL素子内部の光学現象の定量的な理解が進み、現在までに光学設計・解析に必要なアルゴリズムの構築と計算ソフトウェアがほぼ開発できた。また、光取り出し効率の改善に向けた各種の要素技術を幾つか新規に提案し、光学解析とその実証実験により、効果を燐光緑色あるいは青色素子等を用いて確認できている。しかし、白色有機素子は10層程度の多層構造が特徴であり、作製技術の点から再現良く試作実験を進めるのが困難な点に、達成できていない部分がある。
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Strategy for Future Research Activity |
独自に開発したマルチスケール光学解析手法は極めて有力な光学設計ツールであり、既に光取り出し効率50%を確認し、最終年度は70%の実現に向けた発展研究を進める予定である。また、白色有機EL素子の作製上の問題点は作製装置とマンパワーに依存するところが多く、素子構造の簡略化を進めると共に、関連企業の協力等を得ながら、その問題を回避し、当初の目標を実現したいと考えている。
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Research Products
(11 results)