2011 Fiscal Year Annual Research Report
次世代ヒューマンインターフェース構築のための伸縮性導電インクの開発
Project/Area Number |
22550172
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 雅博 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60291449)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 大和 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60396455)
牟田 浩明 大阪大学, 工学研究科, 助教 (60362670)
|
Keywords | 有機工業化学 / 導電インク / 絶縁性インク / アパレル用インク / 伸縮性電子回路 / 印刷工法 / ヒューマンインターフェース / 生体信号計測 |
Research Abstract |
人と電子機器をインタラクティブにつなぐヒューマンインターフェースの開発研究において,電極や配線によって装着者の日常的活動が拘束されることが最大の問題となっている.本研究グループでは,伸縮可能な電子回路を衣服に印刷形成することでウェアラブルインターフェースを実現し,この問題を解決することを提案している.本研究課題では,電子回路を衣服に印刷するためのインクを開発し,ウェアラブルインターフェースの動作実証を行うことを目的とする.インクは,硬化後に導電性を示すと同時に優れた伸縮性を示す必要があり,伸縮性バインダー樹脂に導電性を複合化することで開発を行っている. 23年度は,前年度に引き続き,布地印刷が可能な伸縮性インクの開発を進めた.その結果,信号伝送に用いる配線用の導電性インクとその上下に配置する絶縁性インクについては,ウレタン系およびポリエステル系バインダーをベースとすることで開発のめどが立った.導電性インクについては,種々のフィラーを試験してみたが,Agフィラーとするものが最も性能が高く,本研究課題の範囲では,Agフィラーに限定して研究を進めることとした. 生体信号計測用電極と接続するために絶縁被覆の外側に出す,引出電極を形成するために必要なカーボン粒子をフィラーとするインク(カーボンインク)の開発も進めた.このインクが開発できれば,Agなどの金属粒子を使用しない,配線用導電インクの開発につながる可能性もある.バインダー中にカーボン粒子を混合すると極めて粘度が高くなり,ひどい場合にはペースト化ができない場合もあった.この原因は,カーボン粒子の分散性が悪いことに起因していることが示唆された.この問題を解決するため,カーボン粒子表面の分散剤処理を試みた.現在のところ,適切な分散剤の探索と表面処理法の確立を目指して,研究を継続している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
布地印刷可能な配線用の金属粒子含有インクとその上下に配置する絶縁インクに関しては,ほぼ目標性能を満足する材料を開発することができた.その反面,引出電極部に使用するカーボン粒子含有インクの開発がやや遅れている.24年度の早い段階で適切な分散剤の見極めと表面処理方法の見直しを行い,本研究の最終目標である生体信号計測の実証試験につなげることを目標としている.
|
Strategy for Future Research Activity |
配線用インクと絶縁インクに関しては既に目標性能を達成できているため,年度の前半は,課題となっているカーボン含有インクの開発に集中する.現状では,カーボンインクのレオロジー特性が印刷工程に使用でぎるレベルに達していない.問題点は,カーボン粒子に対する適切な分散剤が見つかっていないことと,適切な表面処理技術が確立できていないことにより,インク中でのカーボン粒子の分散が不十分であることにある.本年度は,現状を打開すべく,カーボンナノチューブやグラフェンの表面処理で有効性が報告されている様々な分散剤や表面処理法を検討する.表面処理法については,共同研究者である東北大・林が有している超音波プロセスのノウハウを最大限に利用する予定である. 最終的に,カーボンインクで形成した引出電極に,生体信号計測用電極を接続し,人の筋電や心電などの計測を行い,伸縮配線に起因するノイズがどの程度,生体信号計測に影響を及ぼすのかを明確にする.24年12月の国際会議で発表を行うという目標は変更せず,研究を推進していく予定である.
|