2011 Fiscal Year Annual Research Report
高精度量子化学・統計力学計算による高分子の構造・物性予測の展開と検証
Project/Area Number |
22550190
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
笹沼 裕二 千葉大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (30205877)
|
Keywords | 高分子構造・物性 / 高分子合成 / 計算化学 / 分子設計 |
Research Abstract |
(課題1)「異種ヘテロ元素を含む新規高分子の分子設計の実証」:主鎖にエーテル基を含むポリアミドのカルボニル基を還元することでエチレンイミン-エチレンオキシド交互共重合体の合成を試み、オリゴマーレベルの重合体が得られた。ポリ(N-メチルエチレンイミン)を合成し、溶解性、相転移挙動を調べ、塩基解離定数(pKb)を求めた。以下にその実験結果を述べる。 重量平均分子量は1900。水から有機溶媒までに広い範囲の溶媒に溶け、水溶液でLCST、トルエン溶液でUCSTの相転移を示し、水溶液では無機塩の添加により曇点が著しく低下する。トルエン溶液では分子が凝集し静的光散乱で求めた凝集体の見かけの分子量は7.5×105、pKbは6.72。熱分解温度は370℃。表面が負に帯電しているラテックス粒子に付着しカチオン性ポリマーとしての性質を示す。これはリン酸基で負に帯電するDNAと複合体を形成する可能性を示している。 (課題2)「複雑な化学種を含む高分子の構造-物性相関の解明と分子設計」:芳香族ポリエステルであるポリブチレンテレフタレート(PBT)、生分解性を示す脂肪族ポリエステルであるポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンマロネートの分子特性解析を行った。PBTについては、ベンゼン環の問で生じるπ/π相互作用エネルギーを分子軌道法計算で補正することでNMR実験と整合する結果を得た。さらに高精度統計力学計算でPBTのコンホメーション特性と基礎物性を評価した。脂肪族ポリエステルについても同様に研究を進め、実験と整合する良好な結果を得ている。ポリエチレンテレフタレートの酸素→硫黄置換体であるポリエチレンジチオテレフタレート、ポリエチレンテトラテレフタレートについて、ab initio統計力学計算で構造・物性を予測し、実際にこの2つのポリマーを合成し様々な特性解析を行い、理論予測を実証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(課題1)「異種ヘテロ元素を含む新規高分子の分子設計の実証」:ポリ(N-メチルエチレンイミン)で特異的な相転移挙動を見いだし、研究計画を一部変更し、この相転移挙動の解析を進めている。(課題2)「複雑な化学種を含む高分子の構造一物性相関の解明と分子設計」:芳香族および脂肪族ポリエステルについては当初の計画以上に進展している。ポリチオエステルおよびポリジチオエステルについても同様である。
|
Strategy for Future Research Activity |
概ね当初の年次計画に従い研究は進んでいる。課題1で研究対象としているポリ(N-メチルエチレンイミン)が興味深い相転移挙動を現わす。課題1の内容にこの相転移挙動の調査を加える。
|
Research Products
(10 results)