2012 Fiscal Year Annual Research Report
革新的有機デバイスを目指した新規オリゴチオフェン含有ケイ素ポリマーの開発
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22550198
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
今榮 一郎 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90293399)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | オリゴチオフェン / ポリシルセスキオキサン / 重縮合 / 金属酸化物 / 電気化学的ドーピング / 電気伝導度 |
Research Abstract |
ポリシルセスキオキサンは、シロキサン結合から形成される三次元ネットワーク構造のポリマーであり、各ケイ素原子上に有機置換基を1つ有する構造上の特徴がある。このポリマーは対応するトリアルコキシシランをモノマーとし、その加水分解・重縮合(ゾル-ゲル反応)により簡便に合成できる。また、得られるポリマーには分子末端に水酸基を多く有しており、金属酸化物基板上の水酸基と容易に脱水縮合できるため、ポリマーが共有結合を介して基板表面に密着することが可能である。このような背景から、研究代表者はこれまでに構造制御したオリゴチオフェンを有する新規ポリシルセスキオキサンの合成に成功し、それらの光学的、電気化学的、電気的性質について調査してきた。その結果、導入するオリゴチオフェンの共役鎖長が長くなるにつれて、得られるポリマー膜の電気伝導度が高くなることを見出した。また、オリゴチオフェン分子の両末端にポリシルセスキオキサンを導入すると、ポリマーネットワークによる束縛が、オリゴチオフェン部位のコンフォメーションを阻害し、電荷輸送特性に影響を及ぼすことも明らかにした。 このような観点から、今年度はさらに高い電荷輸送特性を有するポリマー膜の開発を目指し、オリゴチオフェン部位のコンフォメーションを剛直化する試みとして、側鎖にアルコキシ基を有する一連のオリゴチオフェンを開発した。その結果、得られたオリゴチオフェン類は、導入したアルコキシ基の酸素原子と隣接するチオフェン環の硫黄原子とのカルコゲン原子間相互作用によりオリゴチオフェン部位が剛直化することを見出した。さらに、これらの電気伝導性を評価したところ、チオフェン11量体においてポリチオフェンに匹敵する高い電気伝導性を見出した。 また、今年度は当初計画していた研究に加えて、PEDOT-PSSとシリカの複合膜を簡便なプロセスで作製することにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、構造制御したオリゴチオフェンを有するポリシルセスキオキサンを透明導電膜へ応用することであり、その目標達成のために本年度はアルコキシ基を有するオリゴチオフェンの合成ならびに物性評価を行う予定であった。 本年度は、その当初の予定通りアルコキシ基を有するオリゴチオフェンの合成に成功し、その電荷輸送特性を評価し、チオフェン11量体においてポリチオフェンに匹敵する優れた電気特性を有する化合物開発に成功した。 また、当初の計画に加えて、簡便なプロセスでの高強度透明導電膜を開発することを目指し、市販品のPEDOT-PSSとシリカの複合膜を作製することに成功した。 以上のように、今年度は当初の計画に加え、新たな研究成果を成し遂げることにも成功したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度開発に成功したアルコキシ基を有するオリゴチオフェンに関連する一連の研究成果を踏まえ、今後は溶解性など製造プロセスを考慮した新規オリゴチオフェンの分子設計ならびに化合物合成を行う。 最終的には、得られた溶解性アルコキシ置換オリゴチオフェンをポリシルセスキオキサンネットワークに導入し、仕事関数制御可能な高強度透明導電膜の開発を目指す。
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Research Products
(12 results)