2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22560008
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
松本 俊 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (00020503)
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Keywords | 励起子 / 多重量子井戸 / MBE / スピン偏極 / 磁性半導体 |
Research Abstract |
半導体ナノ構造の局在励起子を有機的に結合することで多次元情報処理や量子演算などの薪規デバイスへの応用が期待できる。本研究では希薄磁性半導体(DMS)井戸と非磁性半導体(NMS)井戸が近接して存在する多重量子井戸(MQW)構造を作製し、量子井戸局在励起子の相互作用と移動現象を明らかにする。平成23年度は、量子井戸の構造パラメータが励起子の光注入機構に及ぼす影響を明らかにし、その結果を活かして励起子移動の観測に適した3重量子井戸構造を作製して励起子の井戸間移動を観測した。 1.井戸層への励起子注入機構 異なる井戸幅をもつ量子井戸局在励起子発光の励起スペクトルを測定し、励起子の光注入機構として(1)井戸層励起子基底状態への縦型光学(LO)フォノン支援共鳴励起、(2)障壁層励起子状態へのLOフォノン支援共鳴励起、(3)障壁層の連続準位への非共鳴励起、を分離・観測した。井戸幅が狭い場合は(1)が、広い場合には(3)が支配的である。特定の井戸から特定の井戸への励起子移動を観測するには(1)の機構が支配的なMQW構造が適することがわかった。 2.3重量子井戸(3QW)構造における励起子の井戸間移動 DMS、NMS1、NMS2の三つの井戸を有する3QW構造のDMS井戸からNMS1井戸およびNMS2井戸への励起子移動の外部印加磁場依存性を測定し、DMS井戸からNMS1井戸への移動とDMS井戸からNMS2井戸への移動が独立の過程であることを示唆するデータを得た。DMS井戸励起子がゼーマンシフトしてNMS1井戸励起子準位、NMS2井戸励起子準位とそれぞれLOフォノン支援共鳴するときに各NMS井戸に励起子が効率よく移動する。各移動の動特性測定の結果、両者に大きな差はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子井戸局在励起子の井戸間移動の観測に適した構造を明らかにし、隣接する井戸への移動と隣の隣の井戸への移動を一つの試料で分離して静的および動的観測に成功した。この成果は励起子移動現象の本質に迫るものであり、設定した研究目的に対しておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.励起子の井戸間移動におけるエネルギー緩和機構をいっそう明確にする実験を実施する。そのために、励起子エネルギーのゼーマンシフトが大きな希薄磁性半導体(DMS)井戸を有する多重量子井戸(MQW)構造を作製し各非磁性半導体(NMS)井戸への移動の外部印加磁場依存性を測定する。 2.励起子移動をデバイスに展開する場合には、外部磁界による変調と同時に外部電界による変調が望ましい。励起子移動に及ぼす外部電界の効果に対して理論的および実験的に検討する。
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Research Products
(6 results)