2010 Fiscal Year Annual Research Report
固有強磁性ジョセフソン接合を内在する超伝導磁性ハイブリッド材料の物性探索
Project/Area Number |
22560015
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
茂筑 高士 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導物性ユニット, 主幹研究員 (20354293)
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Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 磁性超伝導体 / 中性子回折 / 秩序配列 / 磁気秩序 |
Research Abstract |
FeSr_2YCu_2O_<6+δ>は、Ba_2YCu_3O_<6+δ>を母体にCuO_δ鎖のCuサイトにFeを置換した系であるが、多段階アニールにより初めて超伝導体となる。超伝導転移温度T_cは約60Kであり、約20Kに反強磁性的な磁気転移を持つ、超伝導と磁性とが共存する磁性超伝導体である。なお、多段アニールとは、まず還元アニールによりCuとFeの原子価を制御してCuとFeの秩序配列を促進し、次に酸化アニールによりCuO_2面上にキャリアを供給するもので、FeSr_2YCu_2O_<6+δ>ではCuとFeの相互置換や酸素欠損による欠陥が内在している。したがって、FeSr_2YCu_2O_<6+δ>の物性を理解するためには、どのような構造的な乱れがあるかを把握する必要がある。超伝導化された、すなわち、CuとFeが秩序化し酸素欠損が少ないFeSr_2YCu_2O_<6+δ>における磁気秩序は、従来の超伝導化されていない、すなわち、CuとFeが秩序化されていないFeSr_2YCu_2O_<6+δ>における磁気秩序と同様のものと考えられるが、超伝導化されたFeSr_2YCu_2O_<6+δ>では低温での磁気Bragg反射は観測されない。また、TOF中性子回折による精密な結晶構造解析によると、還元アニール後のFeSr_2YCu_2O_<6+δ>でもFeサイトには20%程度のCuの置換があり、その後の酸化アニールによりFeサイトの周りの酸素欠損は、Cuの周りではなくFeの周りから酸素が充填されていくことが明らかになった。したがって、FeO_6八面体の短距離のネットワークが形成され、短距離の反強磁性的な磁気秩序が発現する。また、光電子分光によると、酸素量の変化にもかかわらずFeの原子価はほぼ3価であり、CuO_2面へのキャリアの供給はFeサイトに置換しているCuの周りの4配位の酸素が担っていると考えられる。
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Research Products
(4 results)