2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22560017
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
佐々木 史雄 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (90222009)
|
Keywords | 有機半導体レーザー / マイクロキャビティ / (チオフェン/フェニレン)コオリゴマー / キャリアドーピング / EUPS / 有機EL / pn接合 |
Research Abstract |
本提案では室温での光学特性、伝導特性共に優れた性能を持つ有機半導体材料(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーに共振器量子電磁気学(Cavity Quantum Electro-Dynamics,CQED)が適用できる領域まで微細加工を施し、少ないキャリア注入でレーザー発振が得られるような微小共振器と電流注入デバイス構造とを両立させる有機結晶薄膜作製技術と加工プロセスを開発することに主眼を置いている。TPCO系有機半導体の内、p型であるBPITとn型であるAC5-CF3と言う2つの材料でpn接合を形成し、電流注入での発光を得ているが、電流注入効率が非常に低い状況である。これを改善するために、p,n型材料それぞれにキャリアドーピングを行い、自由キャリア密度を増大させてデバイス特性を向上することを試みている。本年度はキャリア密度が確かに増大することを確認するため、EUV光を用いた光電子分光法(EUPS)により、フェルミ準位の変動を測定した。その際、光電子分光によるTPCO分子の内核電子構造が明らかになり、分子軌道計算とかなり良い一致を示し、そのHOMO準位が確かにパイ軌道から形成されることなどが分かった。また、p型ドーパントであるMoO3をBPITに、n型ドーパントであるCs203をAC5-CF3にいずれも2%ドーピングした時、フェルミ準位はそれぞれ4.0eVから4.3eVへ、4.8eVから3.9eVへシフトすることが実測された。それぞれp型、n型ドーピングとしては妥当なシフトであり、TPCO系有機半導体においてもp,n型制御が可能で、これによる有機ELデバイスの向上が期待できることが分かった。ドーピング試料を使った有機EL素子の特性向上を今後実証し、電流注入性の向上を図っていくことを今後推進していく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロキャビティと電流注入型素子の両立を図る意味では、研究の進展があまり芳しくないが、pn制御による電流注入性の向上がフェルミ準位のシフトにより実証された点は重要な視点であり、双方の進展状況を考慮すると概ね順調に進展していると感じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
キャリアドーピングによる電流注入性の向上が可能であるかどうかの実証がまず重要であり、次年度はその点に集中して取り組む予定である。また、昨年度のEUPS分光の結果を早急に論文発表していく予定である。n型薄膜の品質がまだ低いことや、良好な結晶性を確保したままpn接合を形成する点などまだいくつかのボトルネックが残っており、電流注入での有機半導体レーザー実現には課題が多い。それらを1つ1つ着実に改善していくための知見・プロセス手法などを開発していく予定である。
|