2011 Fiscal Year Annual Research Report
難育成高温超伝導体大型単結晶の作製技術開発と直接手法による物性評価
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22560018
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
伊藤 利充 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (80356485)
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Keywords | 結晶成長 / レーザ加熱 / 酸化物高温超伝導体 / 低温物性 |
Research Abstract |
難育成高温超伝導体に対して独自開発のレーザ加熱結晶育成技術を適用することにより、従来技術では達成不可能であった育成方向に急峻な温度勾配を実現し、問題となっていた原料棒における不要な反応を抑制し、大型結晶の育成に成功した。 La2-xBaxCuO4に対してはx=1/8前後の様々な組成の単結晶を準備した。輸送特性を評価したところ、ストライプが存在するx>0.10の組成において以下の振る舞いが数多くの試料に共通に見られた。磁場中抵抗率の温度依存性に見られる超伝導転移は平行にシフトする。磁場により超伝導を抑制するとlog(T)の発散が見られる。ストライプ相ではCuO2面間の超伝導相関が失われて二次元超伝導が実現しているという説があるが、得られた実験結果の特徴と関係している可能性がある。また、ホール係数の測定を行なったところ、x=1/8付近で広い温度範囲で異常に小さな値を示したが、これについては再現性を確認する必要性があると思われる。 LnBa2Cu307の結晶育成に取り組んだ。様々なランタノイドLnに対して試みたが、結晶育成が可能であったのはLn=Laの場合のみであった。温度-組成状態図からは様々なLnに対して結晶育成が可能であることが示されているが、LnBa2Cu307と共存する液相面が狭いことに加えて、一般にLn2BaCu05が安定相だということが原因だと考えられる。Ln=Laの場合のみLn2BaCu05が存在しないので、LaBa2Cu307の結晶育成ができたものと考えられる。得られた結晶の粉末X線回折からは単相であることが示され、ラウエ写真からは明瞭なスポットが観測され結晶性の良いことが示された。しかしながら、結晶にひびが入りやすいという問題が新たに生じた。結晶を酸素アニールした後に抵抗率・帯磁率から超伝導転移温度を評価したところ90Kを越え、質のよいことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
難育成高温超伝導体として対象としていたLa2-xBaxCu04およびLnBa2Cu307の両方の単結晶が得られるようになっており、適切に物性評価が行なわれている。
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Strategy for Future Research Activity |
結晶育成が可能であることを示したLaBa2Cu307について育成条件を詰めることによって良質結晶脊成技術を完成させる。得られた結晶を用いて直接手法による物性測定を完結させる。計画通りに研究が遂行できる見込みである。
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Research Products
(5 results)