2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケールで制御された界面構造を利用した新たな電子物性の探索
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22560019
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小林 功佳 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (80221969)
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / 第一原理計算 / 輸送特性 / グラフェン / スピントロニクス / 表面界面電子物性 / 計算物理 / ナノ構造 |
Research Abstract |
本年度は、トポロジカル絶縁体表面の原子ステップの電子透過に関する研究を行った。トポロジカル絶縁体とは、2005年に導入された物質の電子的な性質に関する新しい概念である。従来の金属・絶縁体の分類に加えて、絶縁体を2種類に分類することができる。一つは自明な絶縁体であり、もう一つが非自明なトポロジカル絶縁体である。トポロジカル絶縁体の表面には、スピン分極した表面状態バンドが奇数存在する。この表面状態は質量ゼロのディラック方程式で記述され、非磁性の散乱体に対して後方散乱が起こらない、という性質をもつ。2009年にBi_2Se_3およびBi_2Te_3が単一のディラック・コーンをもつ3次元トポロジカル絶縁体であることが理論的および実験的に示され、これらの物質に関する研究が非常に活発になった。本研究では、これらの表面での原子ステップの電子透過特性を理論的に研究した。表面の原子ステップは、物質表面に必ず存在するものであり、トポロジカル表面状態の電子の輸送特性を決める一つの重要な要因である。計算にはタイト・バインディング法を用いた。タイト・バインディングのパラメータは、密度汎関数法による計算結果を再現するように定めた。計算の結果、新たにわかったことは、ステップの透過特性がBi_2Se_3とBi_2Te_3とで大きく異なることである。前者は、単純なディラック・ハミルトニアンの用いたモデルで理解できるのに対して、後者はhexagonal warping効果が本質的に重要であることがわかった。特に、hexagonal warping項に含まれるエヴァネッセント状態により完全反射が生ずることが、新たにわかった。このような現象は、2層グラフェンの系でも見られる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に沿った研究成果があり、学術雑誌に掲載され、学会・国際会議等で発表されていること。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進展はおおむね順調であり、今後も引き続き現在の研究方法を維持してさらに発展を図る。
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Research Products
(12 results)