2010 Fiscal Year Annual Research Report
動的スケーリング理論を用いた電気めっき薄膜の内部応力形成機構に関する研究
Project/Area Number |
22560025
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
斉藤 正敏 琉球大学, 工学部, 教授 (00284951)
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Keywords | 内部応力 / 動的スケーリング / 緩和機構 / 電気めっき / 薄膜 |
Research Abstract |
本年度の研究目標は、パルス電流によるニッケル電気めっき薄膜の内部応力に関してベントストリップ法を用いてパルス振幅、パルスon時間、パルスoff時間、膜厚が組み込まれたべき乗則で内部応力を表現し、そのべき乗の指数を決定する。また、クロスオーバー厚さの存在を明らかにすることである。 研究結果は、次の通りである。 内部応力σは σ~ia^(-0.5){{Ton)^(0.3)/h^(0.24)}(Toff)^(-0.28) で与えられる。ここでiaはパルス電流の振幅、hは膜厚、Tonはパルスオン時間、Toffはパルスオフ時間である。この結果は動的スケーリング理論から予想されていたこと、べき乗則に従うということを実証するものである。 直流を用いた場合と異なり、以下に説明するように時間依存の関係、成長速度や緩和時間などの物理的意味を持った項で構成されている。パルスオン時間の増大は直流電析で得られる内部応力に漸近し、パルスオフ時間の増大によって引き起こされる内部応力の減少はパルスオフ時間内での表面原子の運動による緩和機構によるものと推定される。特に右辺の第二項は薄膜の成長速度という動的な振る舞いに関係し、第3項は応力を緩和させる緩和機構に関係している。この結果はこれまで不明であった内部応力とパルス電析に於ける3つのパラメターの関係を与えるだけでなく、スケーリングとの関係、従って指数の物理的意味を与える動的スケーリング理論から理解できることを初めて実験的に示すものである。また興味深い点は直流の効果と同じ項電流密度のべき乗がその指数と共に残っており、更にその指数の値も同じ点にある。 しかしながら、クロスオーバー厚さの存在については膜厚を増加させると測定限界を越えてしまい、得られていないため今後の課題として残っている。これらの結果を投稿するための準備をしている。
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