2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子ビーム照射による試料帯電の広範囲ナノメートル分解能・リアルタイム計測技術開発
Project/Area Number |
22560026
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
小寺 正敏 大阪工業大学, 工学部, 教授 (40170279)
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Keywords | 走査電子顕微鏡 / 電子ビーム照射に伴う帯電 / 静電気力顕微鏡システム / 帯電電位測定 / プローブ顕微鏡法 |
Research Abstract |
本年度(平成23年度)は、電子ビーム照射による絶縁物試料表面の帯電電位の測定を行うことができる静電気力顕微鏡システムをほぼ完成することができた。当初の予定通り、表面電位を測定するのに零位法を用いて、測定プローブのたわみを圧電素子で感知し、圧電ひずみ抵抗の変化をブリッジ回路で検出した。表面電位を相殺する電圧を試料裏面に印加することでプローブが最も試料表面から離れることを利用して10mV程度の精度で表面電位を測定することに成功した。また、空間分解能として約50μm程度の分解能が得られた。これらの成果は学会において評価された。この値はプローブ先端のサイズというよりプローブを設置しているカンチレバーの横方向サイズに相当することから、より高分解能を求めるにはカンチレバーをより細くする必要があることが分かった。 一方、当初の研究計画に沿って、本年度は試料を直接照射する電子ビームが試料内で蓄積する電荷分布だけでなく、試料からの反射電子が電子顕微鏡試料室内壁で反射して試料表面を再び照射する、いわゆるフォギング電子の影響を調べた。まず、上記の開発した静電気力顕微鏡システムで数100μm以内の電位分布を求めた。次に、反射電子電流を直接測定できるように試料台に直径3cmまでの5~6組の環状電極を置きフォギング電子電流の数cmにわたる半径方向の依存性を求めた。さらに電子散乱シミュレーションによりフォギング電子の1μm以内の分布から数10cmにわたる広範囲の空間分布を求めた。その結果、シミュレーションでは数cmまでの範囲に広がる大きな分布が予想されたが、実際にはそれほど大きく広がらず1cm以下に分布が集中する現象が見られた。フォギング電子は電子顕微鏡法におけるノイズを形成し、電子ビームリソグラフィにおいては電子ビームのかぶりを形成する。今後は開発中のシステムを用いてこれらを定量化していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績概要に示すようにフォギング電子の空間分布について測定しその結果について学会で報告するところまで達成でき、交付申請書に記載した研究の目的を満足している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究予定では開発中の静電気力顕微鏡について、振動電位、振動プローブ、ならびにロックインアンプの機構を付加することによってケルビンプローブ応力顕微鏡システムをも構築することにしていた。しかし、一方で現在のシステムを用いることで、当初の目的とする電子顕微鏡法や電子ビームリソグラフィ技術における重要な成果が得られると予想されることから、本システムでの測定電位の精度や妥当性検討は市販のケルビンプローブ応力顕微鏡による結果との比較によって行うものと変更する。
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