2011 Fiscal Year Annual Research Report
TEMーマイクロカロリメータEDSによる高精度分析の実現と金属材料への応用
Project/Area Number |
22560028
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
原 徹 独立行政法人物質・材料研究機構, 表界面構造・物性ユニット, 主幹研究員 (70238161)
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Keywords | 電子顕微鏡 / 超伝導材料・素子 / 超精密計測 / 解析・評価 / 金属物性 |
Research Abstract |
我々はこれまでに透過型電子顕微鏡(TEM)でのエネルギー分散型X線分光(XEDS)分析の高精度化を目的として、マイクロカロリメータ型検出器を応用した、TEM-XEDS分析システムを開発している。現在までに従来型のSi(Li)検出器のエネルギー分解能(130eV)よりも一桁以上高い7.6eVを達成している。この装置の高いエネルギー分解能により、近接ピークの分離や最小検出限界の向上が期待でき、より高精度な組成分析が可能になると考えられる。 本研究では、これまでに開発した装置を実用的な分析に供するための解析基盤技術の検討を実施するとともに、複雑な組織・組成を持つ金属材料への応用に展開し、偏析や析出などの微小な組成変動の検出と定量化を試み、高感度かつ高精度な微量元素の定量分析手法を確立することを目的とする。 本研究では、現有装置の基礎特性評価とその試験的応用を主とし、手法の構築全体を三年間を目処として完成させる。その初年度である平成22年度は装置の基礎特性評価を実施した。その結果を考慮したうえで、平成23年度は下記の事項を実施した。なお、平成22年度末に、東日本大震災により装置が被災し使用不能になったため、平成23年度は九州大学にある類似装置(SEM-マイクロカロリメータEDS)を利用して実験を継続した。 1.X線ポリキャピラリレンズの特性測定やアライメント方法の改良を実施した。 2.スペクトル形状の特長を定量的に理解するために、これまでに取得したスペクトルを精査し、本検出器の最小検出限界に関する知見を得た。 3.SEM-マイクロカロリメータEDSシステムはSDD型半導体検出器も併設されているため、異なる検出器で同時に測定を行い、それぞれの特性の違いを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、我々が開発したTES型マイクロカロリメータEDSをTEMに装備した装置を用いて種々の測定を行う予定であった。しかし、平成22年度末の東日本大震災により装置が被災し使用不能になった。そこで九州大学で実施している「九州地区ナノテクノロジー拠点ネットワーク・超顕微解析支援」に依頼し、同種の検出器がSEMに取り付けてある装置を利用して進めることになった。基本的には当初計画で予定していた通りの実験が実施できたが、TEMに特有の項目が実施できていない状態である。一方で、当初計画外のSEMでのデータが得られたことは貴重で、終了時までには当初計画以上のデータが得られる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当該検出器をTEMに設置した装置は、本年(平成24年)後半には、被災前より高度な検出器を新たに搭載して稼動する予定である。それまでにX線ポリキャピラリレンズの特性評価をTEMに取り付けた状態で終了させておけば、当初計画通りに終了する予定である。研究計画の変更は考えていない。
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Research Products
(1 results)