2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規熱電材料のための磁性-半導体微粒子ハイブリッドの開発
Project/Area Number |
22560050
|
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小矢野 幹夫 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (60195873)
|
Keywords | 熱電変換材料 / 磁性微粒子 / ハイブリッド材料 / 熱電性能指数 / 結晶育成 / ビスマス-アンチモン合金 / Bi-Sb-Te |
Research Abstract |
本研究課題では,大きな熱起電力と低い熱伝導率が要求される次世代の熱電変換材料に供するため,熱電半導体微粒子と磁性微粒子のハイブリッド材料を開発することを目的とする。平成23年度は以下の内容を遂行した。 1.前年度に作製した「高温域熱電測定システム」(室温から573K(300℃)までの温度領域で,電気抵抗率ρおよび熱電能αを測定できる)の詳細な装置校正を行った。標準試料としてコンスタンタンを用いた結果,上記の温度範囲で,系統誤差2μV/K,相対誤差7%で熱電能の絶対値が測定できることを確かめた。このシステムの完成は本研究の成果のひとつであり,応用物理学会にて成果発表を行った。 2.磁性ハイブリッド熱電材料の母体の候補として,(1)低温熱電材料ビスマス-アンチモン合金(Bi-Sb)および(2)実用熱電材料Bi-Sb-Te化合物単結晶の合成を行い,その熱電物性を調べた。このうち(2)の単結晶育成は,化学気相法により行った。設定温度や化学輸送剤を最適化することにより,熱電能αが大きな良質の単結晶を得ることができたが,結晶が要求されるサイズまで大きくならずハイブリッドの母体としは不適当であった。これらの結果は論文・学会等で報告された。 3.以上の結果を踏まえ,ハイブリッドの母体としてBi-sbを選択した。Bi-sb(Bi_<0.88>sb_<0.12>)を粉砕した原材料末に,バリウムフェライト微粒子を添加し,現有のマッフル炉で加熱し,Bi-Sb合金を母相とするハイブリッド熱電材料を合成した。このハイブリッドの熱電能αは母体と比較してほとんど変化しないのに対して,電気抵抗率ρはバリウムフェライト微粒子による散乱の増加により,大きく増大した。熱伝導率κは低下した。これらの熱電特性の変化は,サイトパーコレーションモデルにより理解できることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に目的に記載した磁性-半導体微粒子ハイブリッドの合成に成功しており,期待される効果として,磁性微粒子の添加による熱伝導率の低下も実験的に確かめた。現時点では,磁性による熱電能の増強は観測されていないが,これは微粒子が発生する内部磁場が弱いためであることが分かっている。23年度は,より自発磁化の大きいFe-Nd-B微粒子を用いることにより,この問題を解決することができるものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は,Bi-Sbハイブリッド熱電材料の原料となる強磁性体ナノ粒子として,より高い保持力を有するFe-Nd-Bを用いる。母体Bi_<0.88>Sb_<0.12>インゴットを粉砕した原材料末にFe-Nd-B微粒子を添加し,現有のマッフル炉で加熱して試料を作成する。Bi-Sbに対するFe-Nd-B微粒子のモル比は,0から38%までを予定している。得られた試料の構造や組成は,学内共通設備のXRDやEDSによって評価する。熱電性能は,本研究で開発した熱電測定システムおよび現有のPPMS(QUANTUM DESIGN社)を用いて測定する。さらに,ハイブリッド試料を磁化させ,その前後での熱電特性を比較することにより,磁性微粒子の内部磁場が熱電性能に与える効果を明らかにする。
|
Research Products
(4 results)