2011 Fiscal Year Annual Research Report
化学的パラメータに基づく固体飛跡検出器応答特性の評価
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22560051
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山内 知也 神戸大学, 大学院・海事科学研究科, 教授 (40211619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 啓二 神戸大学, 大学院・海事科学研究科, 教授 (40169305)
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Keywords | 固体飛跡検出器 / 高分子材料 / イオントラック / 照射効果 / トラックコア半径 / 放射線化学収率 / エッチピット / 検出閾値 |
Research Abstract |
エッチング型飛跡検出器であるポリエチレン・テレフタレート(PET)やビスフェノールAポリカーボネート(PC)、ポリアリル・ジグルコール・カーボネート(PADC)及びポリイミド(PI)のKAPTONに対し、プロトンからXeイオンまでの種々のトラックにおける化学的損傷パラメータを系統的に求めた。調べた阻止能範囲は10keV/μmから12,000keV/μmであった。ガンマ線照射効果も評価した。化学的損傷パラメータとは、1)トラック単位長さ当りの官能基の損失数:損傷密度、2)照射前の密度分布を仮定し、更にイオンの軌跡に近いものから官能基が失われるとした場合にそれ以内の官能基が全て損失している:トラックコア半径、3)放射線によって沈着したエネルギーの単位量当りの官能基の損失数:放射線化学収率である。カルボニル基については、PC中に形成され損傷の放射線化学収率は2.5程度であり(/100eV)、阻止能にほとんど依存しないことが判明した。PETにおいては阻止能が大きくなるとともに、放射線化学収率が高くなる傾向が見られるが、PADCにおいては、阻止能が低い方が同収率が高くなる。PADCは最も検出感度の高い飛跡検出器であるが、放射線化学的側面からその理由が理解できるようになった。KAPTONについては、阻止能の増大とともに収率は高くなった。 エッチピット形成の閾値を当該阻止能域で評価した。閾値:は、PADC、PC、PET、KAPTONの順に高くなる。前3種の高分子材については水酸化カリウム溶液中で、KAPTONについては次亜塩素酸ナトリウム中でエッチング処理を行った。先に求めた化学的損傷パラメータとの比較から、トラック径方向に2つ以上の切断が生じる場合にエッチピットが形成していることが明らかになった。切断するポイントは、エーテルやエステル、カーボネートエステル内のC-0結合である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学的損傷パラメータとエッチピットの閾値の実験的評価については計画以上に進展しているが、真空効果を評価する際に用いる溶存酸素を記述する拡散モデルの完成がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
化学的損傷パラメータについては特にPADCについて、数100MeV/amu以上の高いエネルギーでの実験を積極的に展開する。トラック形成の物理的段階についての、初期電離モデルや限定的エネルギー損失、2次電子線量分布モデル等の適用可能性の限界を明らかにし、いくつかのモンテカルロシミュレーションコードのイオントラックへの適用可能性について検討する。
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Research Products
(17 results)